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穴吹史士が書いた記事

AICキャスターclick
2003/10/13

都会式犯罪、田舎風犯罪
中国湖南省、洞庭湖のほとりの町、朝早くから、夥しい人が公園に集まっていた。「きょうは裁判の判決の公開言い渡しがあるので、みんなそれを見物にきているんです」と地元のガイド氏がいう。被告は、「六合彩」（リュウホエツァイ）という一種の宝くじのモグリ主催者たちで、すでに死刑の判決が下っていて、この朝の言い渡しのあと、連行されて処刑されるらしいという説明だった。

六合彩は、50くらいの数字の中から、６種の数字を当てるくじで、香港では競馬会が合法的に催行、投票券は数十円から買えるそうだ。当たりがない場合、賞金が積み重なって、数十億円に達することもあるといい、熱狂的な人気を集めているようだ。

インターネットで「六合彩」を検索すると、15万8000件もヒットしたが、ほとんどが香港のサイト。当たり数字の予想屋とか、共同購入組織とか、ネット経由の購入窓口とか、それらが組み合わさったものなのだろうか、「神童」「六合王」「天玄」「彩星」「覇王」といった威勢のいい文字が並んでいる。

中国本土の六合彩は、香港から広東省経由で、隣接する湖南省や福建省に広がったといわれる。農民がこれに熱中し、朝から晩まで数字とにらめっこ、全く働かなくなり、破産、一家離散が続出した。そんな射幸心をあおる害もさることながら、問題は抽選が全くインチキであったこと。香港や広東省の都会から乗り込んできた主催者たちには、当たりを出すつもりがはじめからなく、仲間を順番に当選者に仕立てていたという。

それが死刑に値する犯罪かどうかはともかく、判決の公開言い渡しは、簡単にだまされる農民を教育する狙いがあるのだと、これも地元のガイド氏の説明である。

しかし、農民がだまされっぱなしかというと、そうでもないらしい。バスで道路を走っていて、「車匪路覇」（チャーピールーパー）という標識をよく見かけた。これもなんだか威勢がよい。聞いてみると、「追い剥ぎ」のこと。追い剥ぎを撲滅しようという趣旨の看板だった。

当地の追い剥ぎは、夜中、道路の真ん中に太い丸太を転がしておき、長距離のバスがその前で止まったところへ、匕首を持って乗り込み、乗客から金目のものを奪う。通行料金の徴収所で止まったところを襲うケースもあり、地元の農民の関与が疑われる所以ともなっている。

これも草深い道で、「禁鞭」（チンピエン）と威勢よく大書した高札を見つけた。漢方で「鞭」が男性器を意味するという生半可な知識があったので、あれこれ想像して困惑。同行の中国人Ｐさんに、「もしかして、立ち小便禁止？」と尋ねると、「こんな場所で、そんなもの禁止してどうします。誰も守らないでしょ」といわれてしまった。鞭とは鞭炮（ピエンパオ）、つまり爆竹のことだった。爆竹禁止。爆竹くらい、思う存分鳴らせてやりたくなる寂しい田舎ではあったが。