「冬ソナの島」の社長として 手腕を振るう絵本作家 康禹鉉さん（51） ソウルの北東60キロ、ダム湖に浮かぶ一周６キロの小島の経営を任されたのは、３年前の秋。メタセコイアの巨木がある以外、特徴がない古い遊園地で、行き詰まっていた。 韓国の高名なデザイナーで絵本作家でもある。「さばくのきょうりゅう」という作品は日本でも出版され、国際的な受賞も数々。大学教授に就任する話も決まっていた。 アーティストの経歴は華麗でも、ビジネスマンとしては未知数。だが、オーナー一族の出版社で雑誌の表紙を手がけたとき、なぜか社長にと見込まれてしまった。２度断って３度目に受けた。条件は、「月給100ウォン（約10円）。オーナーは経営に一切口を出さないこと。１年で利益を２倍にし、それを超えた分は全部ぼくがいただきます」。 社長になってすぐ、テレビドラマの監督がロケ地を探しにやって来た。場所代200万ウォンという担当者の見積書を破り、「好きなだけ撮ってください。タダで」と即決。 このドラマが、「冬のソナタ」だったのは強運というほかない。以後映画撮影やコンサート開催の依頼が相次ぎ、公益的な文化事業はすべて無料で受け入れた。 その南怡島に日本からもファンが殺到、入場者は社長になった年の２７万人から今年は130万人に。利益の一部は奨学金にあて、陶芸家とガラス工芸家が１人ずつ、月100万ウォンの支給を受けて島内にアトリエを構えている。 （文・写真　穴吹史士）

目次へ 記事の無断転載を禁じます。著作権は朝日新聞社に帰属します。

あなぶき・ふみお / ７期天国 / 七福会 mail to seventh heaven office