上野風月堂 17歳の少年が大坂から江戸に出て菓子商を開いたのは18世紀半ば。その大住喜右衛門の養女が大名・水野家に腰元として勤め、水野忠邦を生んだと伝えられる。天保の改革を断行した後年の老中だ。 そんな関係で幕府の重鎮・松平定信から「風月堂清白」の名をもらった。出典は北宋の文人政治家・蘇軾の「赤壁賦」にある「月白く風清し」の一節。現在も使われている屋号の文字は忠邦が書家・市河米庵に書かせたものだ。「風」が異体字になっているのは、米庵の趣向であろう。 明治以降は洋菓子に進出、名職人が輩出した。月堂を名乗る一門が一時は十数店を数え、独立して有名店となったところも多い。 一方、東京・京橋の本家が56（昭和31）年に店を閉め、創業者大住家の直営は、５代目喜右衛門の３男が興した上野月堂だけとなっている。

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