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2005/04/16 許仙と白素貞  昆劇「白蛇伝」で許仙を演じる温宇航さん（左）と 白素貞役の山田淳子さん＝中国・北京の湖広会館楽屋で |
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いつもは専属の一座が孫悟空の活劇「閙天宮（ナオティエンコン）」や項羽と虞姫（ぐき）の「覇王別姫（バーワンビエジー）」など、京劇の人気演目を掛けている。観光客相手で入場料も高い。 今年１月２日まで３日続いた昆劇公演は様子が違った。地元の老人が家族連れで次々にやってきた。入場無料、茶も菓子も持ち込み可。「白蛇伝」の主人公・許仙（シューシェン）が現れると、「好、好」と盛んに声がかかった。 温宇航（ウェンユーハン）さん（33）。歌声はただ甲高いばかりでなく、深みがある。身ぶりは大げさに見えて、流れるように自然だ。昆劇の二枚目男優で、若手ナンバーワンといわれる。主に欧米で活動、中国の舞台は久しぶりだ。 昆劇は600年前、江蘇省に発祥、中国の古典劇の中で最も長い歴史と高い格式を持つ。京劇の源流のひとつだが、洗練された様式が知識人に愛好され、よく日本の能にたとえられる。実際、能楽と同時に2001年、ユネスコの無形世界文化遺産に登録されている。 今回の公演は、昆劇の名女形だった俳優の没後10年を記念して開かれた。「白蛇伝」は昆劇でも人気の高い演目だ。そのヒロイン、白素貞（バイスーチェン）役は山田淳子さん（38）。日本人である。「温さんとは、毎年１回は許仙と素貞で共演して、もう13回目かなあ」という。伝統的な舞台で、外国人に大役が振られる。どういうことなのか。 淳子さんだけではない。約30人の出演者の中に日本人が７人。主役かそれに準じる役をこなした。三野雄一郎さん（29）は、中国でも今は珍しくなった女形で、「中国人の心を完全につかんでいる」といわれ、「好」がかかるくちだ。それぞれ、国内で会社や役所に勤めながら、「日本昆劇之友社」という団体に所属、この公演のために、北京に駆けつけた。 「昆劇は、発声が京劇ほど不自然でないので、日本人にも習得しやすい。趣味人のだんな芸として、プロでない者が舞台に立つ習慣もあった。日本の謡曲や義太夫を考えればわかりやすいかも」と中国演劇が専門の赤松紀彦・京都大学大学院助教授（48）は説明する。自分も昆劇の笛の奏者で、湖広会館では楽隊席で笙を吹いていた。 文・穴吹史士
写真・白谷達也
●ぶらり 北京の西150キロ、河北省蔚県（ユイシェン）は明代以来の北方防衛と交易の要衝で、かつて約800の集落に800の戯台、つまり伝統演劇の舞台があった。今も140カ所ほど残り、実際に上演されることも。 「そんな古い村が、映画のロケによく使われます」と蔚県博物館の李新威（リーシンウェイ）館長（41）。その中の１本、「鬼が来た」（監督・姜文（チアンウェン）、出演・香川照之）は200年のカンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリを受賞した。 戯台があるのどかな村々を巡っていると、国道脇にテントが張られ、数百人が集まっているのに出くわした。河北省蔚県晋劇団の移動舞台で、司珍（シーチェン）団長（42）によると、年間300回以上の公演をこなしているという。お芝居好きの土地柄なのだ。  田舎を回る河北省蔚県晋劇団の小屋がけ芝居。 晋劇は山西省の地方劇だ＝河北省蔚県で 清時代の北京は、皇帝の居城を含む北の内城と庶民の街区である南の外城に分けられ、その境界が前門（チェンメン）だった。内城で営業が許可されなかった芝居小屋はここに集まった。映画館や芝居を見せる茶館が飲食店や衣料品安売り屋の間に点在、浅草にたとえられる。 湖広会館へは前門から迷路のような横丁・胡同（フートン）や世界的な古美術街・琉璃廠（リウリーチャン）をぶらぶら歩いて行ける。 ほかに常打ちの劇場に、建国門内大街の長安大戯院などがある。中央電視台（ＣＣＴＶ）１１チャンネルは朝６時から深夜まで伝統演劇を放映。 京劇「白蛇伝」のビデオＣＤはネット販売で入手可。アニメ「白蛇伝」はＤＶＤが東映ビデオから発売中。  ●出会いと別れは物語に似て ●アニメ大国・日本の原点 ●ｅから ●映像レポート・中華見聞録 |
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