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穴吹史士が書いた記事

AICキャスターclick
2000/02/14

デジタル物欲病
asahi.comの編集部に「物欲３兄弟」というのがいるらしい。うち１人は女性のようなので、正しくは「物欲３姉弟」と書くべきかもしれない。もう１人加わって、最近は「物欲４天王」になっているという話も聞いたが、結局どうなっているのか。

「松葉一清のサイトsearch」を読んでいると、松葉記者が「物欲大魔人」であることがよくわかる。とにかく買いまくっている。新しいものが出たと聞けば、すぐさま買い、古いものが見つかったというと、掘り出して買い……。彼の家の構造は、どうなっているのだろうか。給料は間に合っているのだろうか。他人事ながら、心配である。デジタル世界の支配原理は、「物欲」ではないかと、彼を見ていると、そう思う。

私は本来、物欲が薄い方である。着るもの、はくもの、安物ですまし、それもめったに更新しない。小遣いはもっぱら無形物か、一定時間後に無形化するものと交換され、手元には何も残らない。ところが、最近、物欲病に感染したのではと思われる兆候があり、少しぞっとしている。

暮れにCD-Rを買い、つい先日は、ISDNのターミナル・アダプター（以下、TAと略）を買ってしまった。どちらも５万円前後の商品で、私としては思い切った買い物である。TAはNECの新製品で、電話線の出口から離れたところでも、無線子機経由で送受信できるタイプ。人気商品だとかで、ヨドバシで予約して、入手まで約１週間かかった。

いままでは、NTT-TEのTAを使っていた。DSUと別々になった古いタイプだ。ISDNが急速に家庭に入り始めた初期のころに買った。なんやかんやで、５万円くらい、あるいはそれ以上かかったかも知れない。デスクトップのパソコンが、同じ部屋の中ながら、電話線出口と離れた場所にあったため、３メートルのケーブルを５本つなぎ、壁を這わせて接続した。そのケーブル代がけっこう高かったのだ。

その後、仕事の本拠をノート・パソコンに移し、電話線出口からもっと離れた２階で作業するようになって、やむなく、アナログ回線を使っていた。なにかいいISDN機が出ないものかと思っていたところに、NECの無線新機種が現れたので、ぱくっといったわけである。

この新製品、無線子機経由で通信しているぶんは、極めて快調である。が、ケーブル接続だと、モデムがまるで反応しない。あるいは初歩的な設定ミスかもしれないと、サポートセンターに電話、長い長い話し中の末、やっとお姉さんとお話しでき、ソフトを削除したり入れ直したり、初期化を何度も繰り返したり、指示通りあれこれ試みてもまるでダメ。

「パソコンのほうが悪い」といわれて、デスクトップのメーカーのサポートセンターに電話、また指示通りあれこれやってダメ。再び、みたび、TEのサポートセンターへ。デスクトップとノートをつなぎ変えてみたりもし、１日中、お姉さんと電話で親しくお話しし、「申しわけありませんが、原因不明です」が結論。その日は、とうとう会社に行けなかった。

マニュアルを徹底的に読み直せば、解決するのかもしれない。サービスセンターで見てもらう手もあるだろう。しかし、TAのためにそう何度も会社を休むわけにはゆかない。とりあえず、ノートで仕事するのには、支障がないので、そのままにしてある。

私が危惧しているのは、そうやってTAをほったらかしにしているうちに、もっと新しい高速通信システムが、普及してしまうのではないかということである。ISDNより早い方式が、何種類も実用化されつつあるのは、周知の通りだ。うちのTAがちゃんと動かないまま、陳腐化してしまっては、思い切った投資をした私としては、泣くに泣けない。

ところで、わが家にはCATVが入っている。その回線を使った高速通信サービスが、いずれ構築されるのではないかと、楽しみにしていた。しかし、ここのCATV会社は浮き世離れしていて、その気配がまったくない。「ご近所で、おたくが一番早いです。というか、おたくだけ」というようなタイミングで、それゆえ初期の負担金が今よりずっと高いときに加入したのに……。

そういえば、初物買いの癖はあった。ソニーのサイバーショットも、発売直後、値段が天井の時に買ったし、ニコンのクールピクスもそう。私がいま最も危惧しているのは、ずっと前から物欲病にかかっていたのではないかということである。