anabukis articles archives

穴吹史士が書いた記事

AICキャスターclick
2001/01/15

ウイルスの爆笑問題
一口でいうと、魔が差したのである。ちょうど１週間前の月曜、自宅でAICの編集とアップロードを終えた直後のことだ。知人から来たメールに、見慣れないファイルが添付されているのに気づき、ふと開いてみた。とくに何ごとも起きず、２時間後。別件でメールした人から、携帯電話に連絡が入り、「へんなファイルがついてたけど、ウイルスじゃありませんか？」

わっ。すぐに一切が明らかになった。スキャナーと画像ソフトを起動すると、エラー表示が出るようになっていた。その段階では、たいした実害がなかったので、「調子悪いなー」ですましていたが、間違いなく、ウイルスの仕業だと思えた。感染後にメールを出した数人に、「絶対に添付ファイルを開かないように」と連絡。ウイルスつきメールの発信人にも電話したところ、「えっ、まだ残ってた？　駆除したはずなんだけど。ごめんごめん」という答え。

休み明けの火曜日、会社のパソコンクリニックに、患者を持ち込み、問題の添付ファイルの名称「Geocities_FREE_sites.pif」を申告すると、「それは本名を、PE_MTX.Aというウイルスです。いまいちばん流行っている奴で、毎日名前を変えるんです。きのうは、確かにその名前でしたね」とのこと。社内の被害も、このウイルスがダントツだそうで、昨年秋口からこれまでに、通常の年の１年分以上の感染例を記録しているという。

情報処理振興事業協会が、「マトリックス」というウイルス、つまりPE_MTX.Aが猛威をふるっており、「症状がすぐには現れず、プログラムを徐々に破壊してゆく」と発表、それを新聞各紙が報道したのは、やっとその週末のことだった。

さて、パソコンクリニックでは、レスポンスを高めるために、ウイルスバスターを外していたのがばれて、まず叱られ、「これからは、絶対に外さず、しかも毎日最新版をダウンロードいたします」と誓わされた。「ま、１時間くらいで駆除できますから」といわれて、患者を預け、１時間後。引き取りにゆくと、ワクチンはまだ感染ファイルを検索している最中。「画像ファイルが、いやに多いですねえ。もう１時間くらいかかるかなあ」といわれる。

「穴吹さんのパソコン、たいへんなことになってます」と、たまたまクリニックを覗いた隣の部の記者が知らせてくれたのは、治療開始から５時間たったころだった。「次から次にアダルト・ページが開いて、クリニック中、爆笑に次ぐ爆笑」

わっ。駆けつける。落ち着きをとりもどしていたクリニックのメンバーが、私の顔を見て、また爆笑。なんでも、PE_MTX.Aの駆除が終わって、念のためほかのウイルスを探してみると、別に２匹が見つかったのだという。それは、アダルト・ページを勝手にお気に入りに登録、次から次に開いて見せるという、まあチンピラ・ウイルスではあったが。インフルエンザの治療に出かけて、淋病が見つかったようなものだった。

「ウイルス３匹というのも社内の記録なら、治療に５時間というのも新記録。とうぶん破られないでしょう」とのこと。クリニックのメンバーは、異様に数の多い私の画像ファイルは、全部アダルト関係と確信している様子で、また爆笑。

信じてもらえないかもしれないが、わたしのパソコンには、常時、普通の記者の100倍程度の数のファイルが入っていると思われ、検索の時間が普通の５倍の５時間ですんだのは、まだ短いほうといえる。この２年半、毎日更新してきたAICの全執筆者のファイル。その原稿のやりとりを含む10000通をはるかに超えるメール。いずれも、いずれ整頓をと思いながら、そのままにしてきたものだ。

画像ファイルでいえば、公用、私用で取りまくったデジカメの画像。ニコン・クールピクスの64MBコンパクト・フラッシュ・メモリーからばかすか移したのが、未整理のまま。さらに、高校の同級生のために運営している私的なサイトのパーツ。とりわけ、GIFアニメを構成する１枚ごとのGIF画像が、これもおそらく1000枚のオーダーで放置されている。

いかん。だんだん、いいわけになってきた。よろしい。アダルト・ページを見たことは認めよう。というのは、AICは、非常に誘惑の多いポストなのだ。読者の投稿欄に、アダルト・ページへのお誘いが、１日に３、４件は入る。「お金、儲けませんか」というメールと双璧で、ときに外国からも来る。魔が差す、というのか、いや、これも読者だからと思って、ときどき、記載のURLをクリックしてみる。

すると、ときに、次から次にページが開いて、クリニックを爆笑させた事態が起こるのであって、べつにこちらが頼んだわけでは決してなく……、いかんいかん、ますます、いいわけになってきた。