浅井裕理 「これ、ニセ札でしょ！」 祥伝社　1400円 夫の転勤に従って中国・北京に赴き、夫が帰任する段になって、同行帰国せず、離婚、生まれて間もない赤ん坊を抱えて、北京にとどまる。著者はそういう経歴の女性である。同じように、夫より北京を選んだ別の女性の話を、さきごろ見聞したばかりだ。男より北京がいいのか？　北京はそんなにいいのか？と、聞いてみたくなる。 だが、北京という男（？）、格好がダンディーなわけでも、心根がフェミニストなわけでもなさそう。それどころか、身のまわりを構わず、ばっちい。ぶっきらぼうで無神経。自分のことしか考えてないエゴイスト。そんな北京に、著者は、しょっちゅういらだち、ときに大声を上げて当たる。 でも、ばっちくて、ぶっきらぼうで、エゴイストで、そうであればあるほど、可愛くて、いとしい北京という男（？）。悔しいけれど、そんな男がときどきいるんだよなー、んー、生まれながらのプレイボーイ、北京。 著者が「娘と私の正しい北京生活」というホームページとメールマガジンに公表してきたエッセーをまとめ、加筆した本である。北京に住んで働く外国人女性が遭遇する不意の事態とそれを克服する過程が、衣食住のそれぞれについて、克明に報告されている。会社の経費で表向きの生活だけを送っている男には、決して伺い知れない世界に立ち入り、北京を愛してみたい女性には、かっこうの指南書になっている。 私自身、近年、中国愛に陥り、海外旅行は中国ばっか（といっても、年に１、２回だけですが）、読む本も中国関係がほぼ９割という偏愛。この著者の北京愛とは、ちょっと違うような気もするが、共通点を見つけるとすれば、鼻の穴から煙を出して、ばりばり働く、精力的な中国、あるいは北京。ま、絶倫無双ぶりに頭くらくら、というところでしょうか。 「あなぶき代理堂」は今回をもって、終了します。

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あなぶき・ふみお / ７期天国 / 七福会 mail to seventh heaven office