フロントランナー オートバックスセブンCEO 住野公一さん（57） 2006/01/14 鈴木亜久里チームのＡＲＴＡ　ＮＳＸとともに。 ０５年１０月のＧＴ５００戦を ぶっちぎり優勝で飾ったマシンだ ＝東京・お台場で

経営にお笑いがあって どこが悪いねん 創業３０年を記念して１年ばかり前に社史を作った。「笑魂伝説」という表題も普通ではないが、中身は漫画。これが類書と決定的に違った。「社史というのはあまり読まれません。作っても読まれない本より読まれるものを」と前書きにある。 「登場人物は実在し、真実のみを描いた」とうたう。主人公は住野公一さん自身で、得意の鼻をへし折られた失敗体験も正直に記している。全166ページ。２時間もあれば読み切れる。 ■　　　　　■ その漫画が、直径15センチの正円形の中に配置されているのは、もともとカップ麺のふたに描かれていたからだ。多忙な店に差し入れした夜食で、「公ちゃんのあったかそうめん」と名付けられていた。「公ちゃん」は、住野さんの社内の愛称だ。カップ麺をすすりながら経営理念を学ぶ……。一石二鳥やないか。 社史は１万5000部刷り、980円で書店にも並べた。ベストセラーになれば一石三鳥だったが、そこまで世間は甘くなく、「売れ行きはぼちぼち」だった。 オートバックスセブンは、エンジンオイル、カーナビ、ＥＴＣなど、自動車用品のチェーン店を国内外に500カ所以上展開している。タイヤは年間約600万本、車100万台分以上を売る。売上高2000億円、経常利益150億円規模の業界最大手である。 父親の故住野敏郎さんが、東大阪市に１号店を開業したのが７４年。開店と同時に客が押し寄せた。店頭に立っていて、「札束があふれてレジが閉まらへん」という目にあう。日本のモータリゼーションの新局面、大衆化の大波に出くわしたのだ。 ■　　　　　■ タイヤを売っていればよいとは思っていない。車文化を売っているつもりだ。時間もかかるし、投資も必要。だから、「高うついてます」とぼやきながらも、鈴木亜久里のレーシングチームを支援し続けている。 自動車レースは、まあ関連事業といえる。けど、なんで漫才やねん？　お笑い芸人の勝ち抜き戦「Ｍ―１グランプリ」の主催には社内に反対もあった。 「尊敬する本田宗一郎さんもユーモアはアイデアや、ウイットは発見や、というようなこというてはります」。父親は元プロボクサーで、カリスマ性が強く、「怒りの経営」が身上だった。その向こうを張って、「笑いの経営」を掲げている。 お客を喜ばせるのが最終目的という点で、お笑いも商売も一緒と主張、店員を「スター」と呼ぶ。採用の条件は、「読み書き、そろばん、ぼけ、つっこみ」。Ｍ―１出場の常連コンビが、関西の店にいる。 社史の表紙を改めて見る。「ユニークな会社には笑いがある」「笑えるスターたちがいる」「笑いの経営を堂々コミック化！　読んだら最後、あなたの足はオートバックスに向いている！」。もうええわ。 文　穴吹史士 写真　白谷達也 48年　大阪市生まれ 66年　東海正之氏にチェロを師事 70年　立命館大学経済学部卒業 大豊産業（オートバックスセブンの前身）入社 74年　オートバックス創業 97年　スーパーオートバックス展開 01年　スポーツカー「我来也（がらいや）」発表 02年　代表取締役CEO 竜巻竜次絵の社史「笑魂伝説」より 以下の記事に続く ●車の大衆化と共に ●転機・父親に反抗 ●自立・眉毛・葉巻 ●ｂから

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あなぶき・ふみお / ７期天国 / 七福会 mail to seventh heaven office