どちらかというと、私もそんな間の悪い人間だった。シャッターが下りる直前まで目をつむっていて、「いいですか、ハイッ」の声で目を開ける、といった対策を試みたこともある。

「だった」というのは、いまの私には、まばたきの必要性がないからだ。というか、ここ１カ月あまり、まばたきが極端に少なくなってしまったのだ。

６月４日付朝日新聞朝刊の近藤康太郎記者の記事によると、パチンコに熱中している人は、まばたきしなくなるのだそうだ。Fmシータ波という脳波も額の中央、前髪の生え際あたりから出ているのだという。

Fmシータ波は、瞑想中の禅僧からも出るらしい。チャクラがぶんぶん回っている状態か。とにかく、人の集中力、熱中度をみる指標は、まばたきとFmシータ波であると、その記事はいっている。

計測器具がないのが残念だが、私の額からも、Fmシータ波が盛んに放出されていると思う。熱中しているのはパチンコではない。gifアニメである。

初めは写真を２コマ、３コマを動かせて喜んでいたが、いまでは相当複雑な下絵を自分で描きおろし、コマ数も10、20。１コマ、１コマの露出時間も微妙に変え、よりナチュラル、よりリアルな映像を追求している。

テーマは、宣伝広告。個人商店や会社を経営している友人を思いだしては、そのバナーを、せっせと作っている。洋服店、お菓子屋、歯医者、一級建築士、扇子製造、ガソリンスタンド、茶道家元、なんやかんやで20ばかり。

頼まれたわけでもなく、また本人たちに許可を得て作っているわけでもない。自分の店や会社にバナーが出来ているのを知らない者も多い。知ったら驚き、そしてきっと喜ぶだろう。公開のあてがないので、宣伝効果は全く期待できないが。

こういう過程を経て、私のまばたきは失われ、Fmシータ波が出るようになった（たぶん）。両こめかみの奧の脳味噌に深いこりを感じる。肩はもっとこっている。かかりつけの医師は、「アタマにはいいかもしれませんが、カラダには悪いですね」との見解だ。

この年になって、世の中の実用に役立たないものに熱中していて、いいのだろうか、と、ときどき思う。いや、まったく役に立っていないわけでもない。

６月１日からAIC目次で「山井教雄のアニメコラム」が始まった。山井さんにgifアニメの手ほどきをしたのは、何を隠そう、私である。雑誌の付録のフリーウエアを入手することから、まず教えた。この欄のdragとclickの境界をなす、怪しげな動画もその成果である。

先日、山井さんのAERA挿し絵10年を祝う会があり、そのあと形通りの記念撮影があった。出来あがった写真が手元にある。緊張した面もちの30人ばかりのなか、まばたきの心配を全然見せず、というか、両目をポカンと開いたうつろな表情で、正面を見ているのが、私と山井さんである。