３つの結婚式　その１
2001年10月吉日

９月１０月にかけて３つの結婚式によばれた。
いずれも友達の息子、娘のものです。

１つ目　嫁はんの中高の同級生の息子。
嫁はんのもっとも仲のいいともだちで、わたし達が結婚してからずっと付き合ってきた。しぜんとその息子達ともずっと。学生のときには、わが店で春になるとバイトにきていたこともあり、わたしにはかわいい子供でした。

仲人も立てない、上司もよばないというので、最初の挨拶がわたしに廻ってきた。それも今流なのかもしれない。でもどうしゃべったらいいか戸惑いはありました。軽い悪口にものってくれないし、静かにきかれて困りもしました。

照れ屋のかれは、晴れがましさに耐えかねて、照れ笑いを常にうかべて落ち着かない様子だった。千林の漬物屋で育った彼の仲間も口はわるいが、大阪独特のあったかさがありました。式のなかでも両親のことを、おっちゃん、おばちゃんで呼び合う下町の仲間がいた。

新婦も看護学校の学生で、彼等が我が家に車を置いてデイトしている頃から知っていたので、よかったなというおもいでした。はじめはしゃべりもしない娘だったのに、新婦になると堂々と新郎を見守っていた。女になるって、強くなることを見せ付けられた。

子供のいないわたしには、なんとなく息子が嫁を貰ってすだってゆくおやじの気持ちを少しだけ味あわせてくれた結婚式でした。



PS この結婚式の会場を仕切っていたのが柿花君でした。
もう子供がおなかに入ったと、けっして出来ちゃった結婚ではないと先日電話がありました。

３つの結婚式　その２
2001年10月吉日



２つ目　大学の友人の娘。比良山ハイキングの翌日ありました。
友達になったのは、体育の単位を３泊ぐらいで取らしてくれるというので、上高地の徳沢合宿に行ったときでした。参加した学生を世話してくれた山岳部の学生が彼でした。おなじ大阪出身ということもあり、仲良くなり、二人とも学生５年目にはよく付き合った。名前は米本。５月の古座にもやってきた。

２０年ほど前、世界で２番目に高いK2登頂の副隊長。小さな子が３人もいるのに嫁さんを振り切ってでかけた。ちなみに隊長は、植村直己に“おさきにどうぞ”と日本人最初にエベレストの頂にたった松浦さんでした。

松浦さんもおなじテーブルで、式に呼ばれておられた。屋久島で１０年暮らして、最近帰ってこられた。他に２人の山岳部OBの方もおられ、生きてきた重みみたいなものを語られていた。結局生きているほうがいいかなということかな。



娘が毎日新聞でバイトしていたときの上司ということで、吉井が娘側の主賓。いろんなことをしゃべったが、結婚にはしあわせなものもあるし、不幸な形もある、それはあなたたちの権利だと。おなじ事をわたしは、この前の式でしゃべった、ちょっとした驚きでした。ずっと一緒だった所為もあるし、格さんの感化もあるんだろうか。

米本と吉井を会わせてのみに行ったとき、酔っ払った米本が佐々木とこに泊まると、彼の嫁さんに電話したら、帰ってきなさいと一喝された。吉井は旦那を悪の世界にひきずりこむ悪魔の時期があった。そいつが挨拶するおもしろさ。

格山遭難騒ぎのときは、会ったこともないのに駆け付けてくれて、影の捜索隊長をしてくれた。この話は格山存命中に明らかにさせておかねばならない。

娘は信楽の土山の旧家に嫁ぐ。花嫁の母親とうちの嫁はんが電話ではなした。ピアノをずっと弾いていて、ピアノの音といっしょに娘がでてゆくと。式の挨拶で、謹厳実直な父親は崇高に生きよとこらえながら言いました。



３つ目がもうすぐやってきます。わたしらの同級生の娘です。

３つの結婚式　その３
2001年10月吉日



３つ目　同級生鈴木の下の娘です。
"むすめ、結婚すんねん。あいつが呼びたい人の中に朝日山のピーナツがあるで。俺しらんで、美穂が勝手に決めているらしい"

鈴木には２人の娘がいて、彼女らがわたしにつけたニックネームが、ピーナツです。ボサボサ頭で、ちょっととんがっているので名づけたのでしょう。父親の友達でよんだのか、自分の友達として呼んだのか分かりません。私も半信半疑でしたが、招待状が本当に届きました。チャペルにも出ろと。美穂が呼んでくれたのですから嬉々としてタキシードを着て、頭はセットしないで出席した。

何年か前、鈴木と彼の知人２人、嫁さん　娘２人それにわたし、７人でゴルフに行きました。鈴木がどっちにはいると聞くので、当然のようにおまえの家族の方。真剣なゴルフはわたしには向いていない。鈴木も上手いが、２人の娘も上手いのです。特に姉の志麻は、高校大学でチャンピオンになっている。ゴルフは楽しむもの、わいわい騒いで廻るものです。

ともかく、あんなにうれしい　楽しいゴルフはしたことがない。
キャディさんが、今日はご家族で。はい。鈴木の嫁さんも１日妻でした。
声をかけてくれるひとがいて、娘さんと一緒でいいですね。はい。お父さんと一緒ですか？　はい。娘達も一緒にあわせてくれた。

１日中はしゃいでいた。あがってみると４０・４０で廻っていた。あんなびっくりするスコアーであがったのはあの時だけ。そのすぐ後に、大きなコンペがあり、ハンデもたくさんあったので、みんなに馬券は俺からと言いまくったら、いつものように１００何点。こっぴどく怒られた。あのときのスコアーカードは埃をかぶっているが、我が家の壁に娘達の言葉つきで今も張られている。



美穂も志麻も思いやりのあるやさしい娘です。姉の志麻が、私を式の始まる前にチャペルに連れて行くと、花嫁達は写真を撮っていました。美穂と腕を組んで花嫁の父をさせてくれたのです。半分冗談でかなり本気で、わたしの夢はバージンロードを歩きたいなと、電話で話したことを覚えていてくれたのです。その役はさすがに鈴木から取るわけにはゆきません。写真館のひとに笑ってと言われ、腕組みされたかりそめの花嫁の父になれました。うれしかった。

引き出物の中に美穂のメッセージがありました。
ありがとう、ピーナツはアイドルだと。じんときました。助山だってアイドルになれるんです。ほんとにいい子たちです。

バージンロードを歩く鈴木の顔はこわばっていました。あんな顔をみたのは始めてです。披露宴が終わってからのおじさん達の２次会では、偏屈な彼をさかなにし、鈴木は寂しさを紛らわすように、翌日闘うクラブチャンピオンの決勝の話をしていた。家に帰って、式場では披露されなかった娘の手紙を読んできっと１人泣いたんだろう。

助山は、仕合わせな１日でした。

びっくりしたこと。
ホテルで朝、今井徳博と出会った。"おまえなんや""息子の結婚式"２時間あとのおなじフロアーの左右で行われていた。美穂の披露宴が終わって隣をのぞいたら、おじぎをしながらお客にビールをついで廻っていた。
あいつは花婿の父をしていた。



いろんなおもいをさせてくれた3つの結婚式でした。
親ってうれしくもあり、哀しいものなのかな。
今井とこもいれて４組の夫婦に幸おおかれと。