８講

「神の怒りに任せよ」

ローマ人への手紙１２：１７〜２１
2001年9月16日

5,000人の死者、行方不明者を出したアメリカでの大惨事。ビルの爆破、大崩壊を目の当たりにするショックは計りしれないほど大きい。特に何回も同じ残酷シーンを見るこどもの心に大きな傷が残るだろう。

人を殺すのが目的である残忍なテロ行為はどんな理由があれ、許されるべきものではない。アメリカの憤りは大変なものであろう。しかし、事件の悲惨さとアメリカの威信が、報復について何の疑問も持たなくしているように思われる。落ち着いて考えるとき、今度の事件がテロリストにすればすでに報復だととれるし、報復をすれば、またそれに対する報復が生まれ、際限なくエスカレートしていく。戦争とはそのようなものであることは歴史が証明している。

今、世界中が冷静にならなければならない。特にアメリカの大統領や指導者たちに、性急に事を起こさず、憤りを押さえて静かに祈り、考えることを望む。「だれに対してでも、悪に悪を報いることをせず、すべての人がよいと思うことを図りなさい。あなたがたは、自分に関する限り、すべての人と平和を保ちなさい。愛する人たち。自分で復讐してはいけません。神の怒りに任せなさい」（ローマ１２：１７〜１９）　「正義のため」とは言っても、人間は、何が正義なのかを確信を持って言えないはずである。人間が人間をさばくことはできない。それは、神の目から見れば人間は誰もが愚かな罪人に過ぎないからである。神のみが真に正しい判断、正しいさばきができるお方なのである。

人間は他人をさばいてはいけない、復讐をしてはいけない、と聖書は教える。指導者たちは、軍事行動でいきなり報復するのではなく、すべてを神に任せる謙虚な気持ちを持ってもらいたい。神も今回のテロ事件には怒っておられるだろう。神はこの悪を行なった者たちには何らかの裁きを与えられるであろうが、神のさばきは結局誰にどのように下るかはわからない。

テロ実行者はイスラム原理主義のグループと言われている。イスラム教では、唯一絶対の神アッラーを信じ、天啓の書が下された4人の預言者を尊ぶ。4人とはモーセ、ダビデ、イエス、マホメットであり、マホメットに下されたコーランの中に完全な神の意志があるとする。また、腹違いの兄弟イシュマエルとイサクがそれぞれアラブ人とユダヤ人の先祖であり、その父アブラハムは両宗教の父祖である。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教は共にそのルーツを一つにすると言える。皆兄弟、同胞である。

人間にできることはどんな状況でも平和を求めることである。アメリカの良識と知恵を結集して対処してほしい。「悪に負けてはいけません。かえって善をもって悪に打ち勝ちなさい」（ローマ１２：２１）　「目には目を」「悪には悪で」では泥沼になることは間違いない。悪が本当に恐れるのは実は「善」であることを認識したい。善は最後には必ず悪を滅ぼすことを信じよう。

「いと高き所に、栄光が、神にあるように。地の上に、平和が、みこころにかなう人々にあるように」（ルカ２：２９〜３２）　神の「みこころにかなう人々」とは民族のへだてなく地上の人々すべてを指している。まことの平和を実現するために天の父はイエス・キリストを地上に送られた。私たちひとりひとりが罪人であることを認識し、悔い改めるとき、心に平和が与えられる。それが世界平和への出発点である。犠牲者、負傷者、行方不明者の家族、友人のために祈ろう。アメリカ初め関係する国々のために祈ろう。そして今後愚かな行動をおこさないようテロリストのためにも祈ろう。そして、これ以上惨事が繰り返されないように祈ろう。

復讐は私のすることである。
私が報いをする、と主は言われる。
「ローマ人への手紙」１２：１９

Vengeance is mine;
I will repay, saith the Lord.
ROMANS 12:19


復讐と報いとはわたしのもの。
「申命記」３２：３５

To me belongeth vengeance,
and recompence;
DEUTERONOMY 32:35


今日も　酔っているのだけど、でも　あなたの前回の説教に　「あざける者の座に着かなかった、その人」という　聖書の一言は　身にしみました。
あなたは　本当の　牧師さんです。いまや　私の　先生です。負うた子に　教えられるのですね。でも　それは　教師の特権です。お寝みなさい。

やまぐち

お断り：説教末尾の聖書からの引用は、長谷川牧師の教導と承認のもと、説教本体の引用に関連し、しかも重複しない章句から、掲載に適当な長さのものを、編集者が適宜選んでいます。