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Noriko's Midnight Journal

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UNCLE GEORGE
October 10,1998

タイトルはWEB管理者が独断でつけています

恋

私にはアメリカ人の伯父が居る。名はGeorge Chaplin。喜劇王と同じ姓である。

母のすぐ上の姉は、若くして未亡人となり、つてがあって、単身渡米。仕事が軌道に乗るまで、娘、息子は、親戚に預けられた。その娘の預けられた先がわが家で、１年間、姉のように、私と一緒に暮らしたのである。

伯母がYale大学で、日本語の講師をしている時に、art部門の学生が、彼女に恋をした。それがGeorgeだった。14歳くらい年下とか。祖母は２人の結婚を承諾した。40年以上も前のことだから、ずいぶん開けた話である。

目眩

その伯父と、私が初めて会ったのは、大学を卒業した年の1969年。アメリカ東部の伯母の家を訪ね、そのまま３ヶ月間、居候を決め込んだ時である。

小さな田舎町だったから、車でなくてはどこへも行けない。手紙を取りに街の郵便局に出かける時も、ついてきてくれ、自分の友達とのパ－ティ－にも、誘ってくれた。

一緒に暮らしたことのある従姉の家庭を訪ねたり、BostonのGeorgeの母親に会いに行ったり、New Yorkへ買い物やお芝居見物に行ったりと、あちこち連れて行ってもくれた。

New Yorkでは、ブ－ツを買うのに、気に入った物が見つかるまで、店から店を渡り歩いた。田舎で静かに絵を描いて暮らしていた伯父は、街の喧騒と、疲労とで、途中で目眩を起こし、しゃがみこんでしまった。

「紀子に引張りまわされて、目眩を起こした」話は、何年経っても、親戚の間で、語り種になっている。

聖人

伯母も自分の娘を預けた経緯から、お返しと思って、私を長い間預かってくれたのだろう。しかし、父親からの度々の要請で、雪の降り積もる朝、２人と泣く泣く別れて、日本に帰って来たのである。

その後、２人は何度か来日。関西にいても、関東にいても、必ず私には会いに来てくれた。だが、伯母は、だんだん呆け始め、最後は癌に冒されて亡くなった。

その間の伯父の献身的看病は、「Saint George」「聖ジョ－ジ」と周りから言われるほどだったという。

夢

日本を愛する伯父は、その後、日本とアメリカを半年ずつ住み分ける生活を始めた。いい具合に、母の長姉の家に、敷地続きの貸し家が空いていた。

恩義があり、多少とも英語が話せ（伯父は、日本人と結婚していたにも拘わらず、殆ど日本語は出来なかった）、しかも暇である、という、伯父にとって、３大コンビニ条件の揃った私は、何かと手伝うことになった。

貸し家のオ－ナ－である伯母夫婦の仲介をし、電気製品を買いに秋葉原に行き、時にはわが家に来てもらって、家庭料理を出した。

東京で絵の個展を開きたいと言いだした時も、つてを頼って、画廊を何軒かを紹介してもらい、その１軒１軒と交渉。１年後に、銀座の画廊で夢は実現した。３年ほど前の事である。

ところが……。

忍耐

アメリカに帰って、大学で絵を教えていた伯父は、今度は生徒（アメリカでは、いろんな年齢の学生が居る）で、14、15年下の人と恋をし、婚約した！

先生と生徒の関係、年齢差、全て伯母と逆である。１度日本に連れて来て紹介されたが、背の高さも逆だった。因みに彼女のファ－ストネイムは、Patience（忍耐）！

そんな訳で、伯父は日本での長期滞在をあきらめ、近頃は、アメリカでずっと彼女と仲良く暮らしているらしい。わが家には、伯父からプレセントされた大きな油絵が２枚残された。そして、私の英語力はどんどん落ちてきている！

みた・のりこ / ７期天国 / 七福会