この五月下旬、釜山市で発行されている、日韓合同文芸同人誌・創刊十周年記念集会に参加のため、プサン４泊の旅をした。日本語で文章表現できることが不文律のグループなので、参加した二十名の韓国側同人の皆さんは、正確な日本語を話す人達で、久しぶりの再会を楽しんだ。

滞在中、市内の地下鉄を五回利用したが、毎回、韓国の若い乗客が、老人の私に席を譲ってくれたのには感心した。また、駅やビルの階段に腰をおろしたり、うずくまっている若者を見かけなかった。彼等が儒教精神で生きているとは思わないが、家庭や学校が、そのような躾をする社会なのであろう。

醇風美俗は、今の日本では、死語に近いが、近頃、昔の日本を見直す空気もあるようだ。「愛国心」教育などという、やや危険な道徳を押しつけるのではなくて、社会人としての躾を、古来からの東洋の美風として、この国で復活させたい。