Ohara's Monologue on Movies

小原與一郎 映画 個人的見解 Part10 January 16, 2003

ご存じの通りの不況風の中　なかなか映画評を書く気にもなれず過ごして来ましたが　先日の大阪忘年会にてリクエストを頂きましたので久々に最近観た秀作「ジョンＱ」について一席。 ジョンＱ・最後の決断 主演：デンゼル・ワシントン 助演：ロバート・デュバル ジェイムズ・ウッズ レイ・リオッタ 監督：ニック・カサヴェテス 一言で総括すれば　親子の情愛を主軸に　アメリカの医療保険の問題点や矛盾に目を向けた 社会的メッセージを持った良質の「医療告発フィクション」と言える。 最愛の息子が心臓病にかかり 心臓移植するしか助からないと宣告される。 だが　移植手術は２５万ドルという高額の上、まず移植待機者名簿に登録するだけでも７万５千ドルを現金前払いしなければならない。 「今までかけてきた保険が効く筈だ」と信じていたジョンは期待を裏切られる。 勤務先の会社が経費節減の為　保険のランクを勝手に下げていた為　保険は適用されない、というのだ。 金を工面する為　ジョンは車や家財道具を売り払い　また友人や教会の仲間は募金を集めてくれた。そうして必死の思いで集めた２万ドルを支払ったにもかかわらず　病院側は金額不足を理由に退院を通告してきた。 事ここに及んでジョンは決心する。「なんとしても息子を助けてみせる！」 ジョンは病院へ入り主任外科医のターナー医師（ジェイムズ・ウッズ）に銃を突きつけて拉致し 救急病棟に１２人の人質と共に立てこもった。 「要求はただ一つ　子供の命を救うことだ！」 シカゴ警察が病院を包囲しベテランのフランク警部補（ロバート・デュバル）が説得に乗り出すが　人気取りをもくろむモンロー本部長（レイ・リオッタ）は早期解決の為　狙撃手を潜入させる。　幸い 狙撃は失敗するがその間にも　マイクの心拍は止まりそうになっていく。 「先生、俺の心臓を息子に移植してくれ！」 ジョンの驚くべき決意と子を思う親心に　その場の皆が言葉を失った。 ここからの結末は ネタばらしになってしまうので控えますが　そこは映画らしく 奇跡的な解決が待っている、とだけ申し上げておきましょう。 ありそうにも無いストーリーなのに 結構主人公に感情移入させられる監督と出演者達の力量はさすが、と言えます。 先日の酔桃さんの「救命ボート云々」の話ではありませんが　「子供の為なら　自分の命も捨てられるか？」と云うのも　結構重い問いではないでしょうか？　さて　あなたなら どうする？ 余談ながら　映画の最後でヒラリー・クリントンをはじめキャスター等の有名人がアメリカの医療保険制度の問題点をコメントしている。 そのヒラリ−の言う「今も保険に入れない人が４０００万人もいる」というのが　繁栄を誇る資本主義大国アメリカのうそ寒い現実の様だ。

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おはら・よいちろう / ７期天国 / 七福会 mail to seventh heaven office