地　 揉みあげの白きをつまみ春暮れる　 孝水

人　 行く春や忘れ物した心地して　 汀里

人　 行く春や犬の仔寝息ふかぶかと　 殷人

春惜しむ眺むる日々の山と川　 鈴華

行く春を惜しみて古都の花めぐり　 吟水

行く春に事寄せ皆で飲むらしき　 酔桃

蘇生せしライラック病み春去りぬ　 九鈴

行く春に独り遅れて小石川　 霧坊

行く春を惜しみて雲の流れざる　 格山

お茶杓のご銘しのぶや春の暮　 鈴華

行く春の句会をダシに宴かな　 櫃妃

人絶えし緋き床几に春惜しむ　 鉢妃

行く春や水面に花びら群なして　 孝水

ゆく春を五百羅漢も眺めおり　 酔桃

行く春やおぼろ月夜の通り抜け　 吟水

行く春を税務署だけが惜別し　 櫃妃

イカナゴのくぎ煮甘辛春惜しむ　 酔桃

行く春や恋の闇路に迷い出て　 汀里

春惜しむ柳の歌は蘇州より　 九鈴

行く春や曳き山賑わう湖北の地　 吟水

行く春や浪華に還る蕪村展　 霧坊

淡墨の舞いて行く春大樹かな　 鉢妃

ジグザグの故郷の道行く春に　 櫃妃

行く春や体内時計ねじゆるく　 殷人

行く春は行く秋よりもかなしかり　 汀里

春惜しむモネの睡蓮眺めつつ　 吟水

行く春や御室の里も花ざかり　 吟水

地　 無縁墓地ハナミズキ燃え尽きんとす　 殷人

人　 盃の薄き縁噛むリラ冷えに　 殷人

杯交わす窓辺の影や春の宵　 格山

冷えた盃握りしめてる菜種梅雨　 殷人

春惜しみ盃交わす不良ども　 櫃妃

今年こそ恋をするぞと心燃え　 櫃妃

茶臼山小雨によもぎ萌え出せり　 霧坊

茶臼山楠萌えて樫萌えて　 殷人

早春や燃える球児の顔と顔　 鈴華

盃に苦き思い出花の蕊　 汀里

酔いしれて花の袂で交わす盃　 鈴華

盃を重ねつつ詠む春句会　 吟水

盃で呑め呑め呑めで体燃え　 櫃妃

大杯に月を浮かべて春の宵　 汀里

新緑の庭を見下ろし豆ご飯　 霧坊

盃に積もる愁いを呑み干して　 吟水

玉杯を重ねて山も霞みけり　 格山

草萌ゆる名庭にビル顔を出し　 鉢妃

盃に思いを注ぎ春の雨　 鉢妃

盃を重ね苦吟す春の宵　 孝水

花びらを浮かべ呑み干す春の盃　 吟水

ぼくはここひそと燃えてる花楓　 汀里

春雨に爽とステンドグラス燃ゆ　 孝水

格山講評 短い間に、みんなこんなん作れるんやねえ。ほんまにうまいなあ。たいしたもんやなあ。 選考方式 投句者各人＋飛び入りの柴野（大浦）至さんが、自作以外の句に、天（３点）、地（２点）、人（１点）の３票を投じ、合計点の多い方から、総合順位の「天」「地」「人」を決めた。 ７天廃人の技量は、格山先生の講評通り、驚くほど向上しており、各人選に迷って、票が分散、また票が入らなかった句との差も、ほとんどなかった。 句の配列は、天、地、人のほかは、順不同。