生まれた時から虚弱で、貧血もひどく、増血剤を飲んだのをきっかけにジンマシンが出て、以来何年間か悩まされた。何が原因か判らないほど、何を食べても出た。

ジンマシンの出ている或る日、兄がいたずらをして、私の脚に爪を立てて「バカ」と書いた。暫くすると、赤くミミズ腫れに「バカ」と言う文字が浮き上がったのである。

そんな私が、ジンマシンから解放されたのは、兄が大学に入った年だった。 ビ−ルを初めて飲んだ兄に、痒い痒いジンマシンが出たのである。

築何十年という、隙間風だらけの古い古い家に生まれ育ったので、風邪を引かない様にと、寝ている間さえ厚着をさせられていた。５年生の時、誰に言われた訳でもなく、自分で「これではいけない」と健気にも決心！

寒い夜、着ていたシャツ（下着）を脱ぎ、お寝間着１枚で寝る事にした。たったこれだけの事で、その後、家族中が風邪で高熱を出しても、私１人元気で、兄に、「馬鹿は風邪を引かないというのは、ほんとだね」とからかわれるようになった。

兄は、私を余程、馬鹿に仕立て上げたいらしい。残念ながら、そんな健康体は、満29才の時に覆されてしまったのだが…。

今思い出しても、おぞましい！　突発性なんとか紅斑との診断で、じくじくして強烈に痒い。真夏だったのに、見苦しいので、長袖、長ズボンで通した。全身と書いたが、幸いな事に、顔だけは何ともなかった（厚顔無恥の見本？）。

完治まで40日もかかり、以来、どんな薬にも恐怖症である。歯科で、麻酔が切れた後にと鎮痛剤を処方されたが、拒否。１晩中、泣きそうなほどの痛みに耐えた。風邪を引いて、９度以上の熱が出ても、ひたすら寝るのみ。

小学生になり、ある日学校から電話があった。給食後、気分が悪くなって保健室で休ませている、と。もしやと思って内容を聞くと、お蕎麦だった。ジンマシンがいっぱい出ていて、フ−フ−と苦しんでいたが、吐いてしまうと暫くして元気になった。

アレルギ−の専門の先生に伺うと、治療の方法もない事はないが、その治療で死ぬ人もあるので、とにかく食べないのがいちばん、お蕎麦を食べなくても生きていけますから、と言うことであった。

自分で鏡を見て泣いていた事もあった。風邪を引くと、気管支喘息も起こすので、高熱、ぼこぼこの顔、呼吸困難（喉はピ−ピ−、お腹は波打つ）の三重苦。勿論、母親の私は、寝ずの看病。

しかし、彼らも成長するに連れ、体力がついたのか、今はあまり問題はない。 ただ、私の父が老人になってから、それまでずっと直っていた喘息の発作が再発し、薬を吸入している毎日である。

子供達も、年を取ったら、又、喘息の発作が再発するかもしれないと、密かに心配している。ま、その頃は、私はこの世に居ないから（居たりして！）、心配する事もないけれど。