この３ヶ月間、次々と物を落としている。そして、昨日また、大事な物を落とし、大変な思いをした。

毎週火曜日はヨガのお稽古日で、そのついでに、家族に頼まれたことをやっておこうと、朝１０時頃からあちこちに出かけた。クリ−ニング店、銀行、病院、ヨガ、レストラン、喫茶店、文房具店、区役所、デパ−ト（贈り物の物色のため、数知れないほどの諸々の売り場、食料品売り場）、もう１度クリ−ニング店。

カンカン照りの猛暑の日だったが、夕方からは雷雨になるとの予報。荷物が多かったので、その日は自転車。黒雲が出ていたが、いい具合に雨が降らないうち、５時半過ぎに家に着いた。ふっと、嫌な予感。やはり…。玄関の鍵が見当たらない！

リュック式のバッグの外側のポケットに、クリップのキ−ホルダ−を挟み、鍵はポケットの中に垂らしてあったのだ。そう言えば、何度もバッグを手に取ったが、そのクリップが目につかなかったような。ポケットの中を探ったのは勿論、バッグの中身を全部出して、調べる。ない、ナイ、無い〜！！！

夫は、夕食不要といって出かけたので、下手をすると夜中になるかもしれない。とにかく探してみなきゃ。ヨガのお稽古着、クリ−ニング店から持ち帰ったＹシャツ、病院の売店で買った本（直木賞受賞作品掲載）、パンなどをドアの前に置き、バッグだけ持って、デパ−トに戻ることにする。

さんざん歩き回った後で歩くのは面倒だったし、雨も降っていないので、また自転車で、来た道の足元を見ながら、ゆっくりと戻る。クリ−ニング店、レストラン、喫茶店、文房具店、その他何ヶ所かで、それぞれ尋ねるも、届け物はない、と。デパ−ト内のお店を全部尋ねまわるのも大変なので、遺失物係に行く。ここにも届けは無かった。一応用紙に記入して、あった場合には連絡をしてもらうことに。銀行、病院、ヨガ教室には、翌日が祝日なので、翌々日しか連絡できない。



途方にくれる。夫はＰＨＳを持っているが、普段あまり使っていない。送信用にたまに使うだけなので、連絡しても無駄だろう。近所の仲良しの家に泣きこもうとも思ったが、夕食時でもあるし、迷惑をかけるのは止めておこう。夕食をどこかで食べて過ごす手もあるが、お茶まで飲んだので、まだお腹がすいていない。さ〜て、どうしようか？

一縷の望みをかけて、夫のＰＨＳにかけてみる。ベルが７、８回、虚しく鳴る。とそこへ、「もしもし」と夫の声。出た！　こっちの方がびっくり。
「私、鍵落としちゃった。高島屋に居るんだけど、家に入れないの。今日、何時頃帰れる？今、どこ？　飲み屋？」
「まだ会社。これから会議なんだよ。判った、断って帰るから、８時には着くから」
「悪いから、会議は出て。ここは９時まで開いてるから、時間潰しが出来るし。終わったら、私のＰＨＳに電話して」
会社に居る時間とは思わなかった。それなら、夫の言う通り、会社に電話すればよかったんだ。

ということで、一安心。いつ電話が鳴っても聞こえるように、ＰＨＳを手に持ち、絶えずアンテナのマ−クがついているかどうかを確認しながら、本屋で立ち読みをしたり、ＣＤ屋に入ったり…。デパ−トの近いことをつくづくありがたく思った。８時過ぎ、ベルが鳴る。１時間後に到着、食べ物も買って帰る、とのこと。私もすることが無くなったし、そろそろ家に帰っていると。

外に出ると、夜だと言うのに、ものすごい暑さ。まもなく雨がポツポツ。と思うや否や、ざ―っとすごい降りになってきた。自転車を引っ張りながら、傘をさして歩く。でも傘なんか、何の役にも立たない。Ｔシャツもスカ−トも、ずぶ濡れ。

再び家に辿り着く。まだ、３、４０分は帰ってこないだろう。玄関には、ヨガから持ちかえった荷物が置いてある。各人、バスタオルを敷いてヨガをするので、そのバスタオルを玄関に広げる。足も濡れて気持ちが悪い。タオルハンカチでぬぐい、バスタオルの上に、素足になった脚を伸ばして座る。

スカ−トもぐっしょりして気持ちが悪いが、それは脱ぐ訳にはいかない。他所の人が入って来た時に、いきなり脚が見えないよう、傘を広げて隠す。本がある。パンがある。なんて運が良いんだろう？！ちょっとお腹がすいてきたので、ミニクロワッサンを１つかじる。後はひたすら、本を読んで過ごした。まるで、ルンペンか、救援を待つ遭難者の心境。

暫くして、足音。他人だったら、と身構えたが、夫だった！「だから、どっかに予備の鍵を隠しておけば、と言ったろう」と、苦笑しながら。９時１０分、やっと家に入れた。夫をこんなに待ちわびたことは、後にも先にも初めてかも？