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映画 個人的見解 Part24 May 26, 2009 |
「スラムドッグ＄ミリオネア」は「スラム(貧民街)の犬」と、蔑まれるスラム育ちの無学な青年(ジャマール)が、ＴＶでお馴染みの「クイズ・ミリオネア」に出て、正解を重ねて行く・・と云う物語。果たして、彼は天才なのか、それともインチキなのか・・？ １日目のＴＶ収録が終わった後、彼は突然警察へ連行され、「インチキを自白しろ！」と責められる。殴られたり、高圧電気を流されたり、の拷問にも屈しない彼の強情さに手を焼いた署長に、彼は「何故答えを知っているのか？」と云う理由を話し始めた。そこには、驚くべき貧困と悲惨、残酷と不条理が横溢したインドの格差社会の現実があった。貧困はもちろん、宗教的対立による暴力と殺戮、孤児達を利用し搾取する悪人達・・、等々、日本では考えられない様なシーンが続出して、なんという社会か・・？と 思わされる。 幼い時に母親をヒンズー教徒に殺され、孤児となったジャマールと兄のサリムは、ラティカという、やはり孤児の少女と知り合い、一緒に行動する様になる。 ある日、「飯を食わしてやる」と誘われ、喜んで付いて行くと、そこは孤児を育てて乞食をさせ、搾取しようという悪人達の巣窟だった。ある夜、稼ぐ為には盲目の方がいいから、と目をツブされる仲間を見たサリムは、ジャマールと共に 魔の巣窟から脱出するが、ラティカは逃げ切れず、捕まってしまう。それからの二人はタージマハールで、見様見真似の偽ガイドをしたり、列車の中でもの売りをしたりして、したたかに生き抜いて行く。そんな年月の間にも、ジャマールはラティカのことを忘れることはなかった。 ムンバイに戻ってきたジャマールは、必死にラティカを探すが、彼女はヤクザのボスの女になっていて、一旦は会えたものの、また行方知れずになってしまう。 そして「何故こんなクイズ番組に出ようと思ったのか？」・・その訳は、実はラティカが自分を見つけてくれるかもしれない、と云う一縷の望みからなのだ、と言う。それを聞いた署長は 彼を釈放し、２日目の番組収録の為、ＴＶ局に送り届けるのだった・・。 「ファイナルアンサー？」と云う 例の息詰まるクイズ場面を随所にはさんで、飽きさせない演出がニクイ。最後はボリウッド映画お約束のノーテンキなダンスシーン。最初は社会派映画？と思わせておいて、最後はほのぼのしたラブストーリーに・・、と云うなんとも不思議な映画であった。インドでは賛否両論 侃侃諤々だそうだが、これまで誰も描いてこなかった、この世界の衝撃的な現実をズバリと描き、しかも 心温まる希望の余韻を残す・・と云う奇跡の様な名人芸は、アカデミーの作品賞、監督賞、脚色賞、音楽賞、など８部門を制覇しただけのことはあると、納得させられる。 「映画は時代を映す鏡」というのが 筆者の持論だが、まさに この映画もそう言える作品だろう。 「ザ・バンク」は また全く異なる「国際金融界の裏事情」という話で、巨大金融機関の裏の顔を暴いている。この映画も脚本が出来たのは数年前だそうで、まさに未曾有の金融危機の今、公開される、と云うのは、絶妙のタイミングと言えよう。ルクセンブルグに本社を置く国際的メガバンクＩＢＢＣが、実は裏では、中東への武器売買の仲介取引で、巨利を上げており、それを告発しようとした関係者が、次々と消されてゆく、と云う物語は 面白いけどホントかね？、と思うのだが、パンフに書いている森永卓郎によれば、実際に犯罪資金のマネーロンダリング等を手掛けていて、１９９１年に破綻した、ＢＣＣＩと云うモデルもあり、映画はフィクションとは云え、描かれている本質はノンフィクションである、と云う事だそうだ。 途中からド派手な銃撃戦になったりで、要するに結局はアクション映画なのだが、ベルリン、ミラノ、ＮＹ、イスタンブール、と世界をワープする映像は、昔の００７を連想させる。「スラムドッグ〜」とは全然違うが、この映画もまた現代社会の一面にメスを入れた佳作と言えよう。 日本映画界も「三丁目の夕日」なんぞの懐旧譚に賞を出してる場合じゃなかろうが・・、と情けない気がするのは、筆者だけであろうか・・？ （ 要するに、時代に対する「問題意識」の問題。） ま、昨年の「おくりびと」には、「高齢化社会における旅立ちを考える」と云う時代性が感じられましたが・・。どうも年のせいかゴタクが多くなった様なので、この辺で・・。 |
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