上野に案外よく行く。目的は、美術展、食事の集まり、湯島天神へお参り、といろいろであるが、そのあと、どら焼きの「うさぎや」と、かりんとうの「花月」でお土産を買い、甘味処の「みつばち」または「みはし」に寄り、更に風月堂でお茶を飲んで帰宅、というのが定番コ−スになっている。今回は次男の高校時代のクラス会だった。私が幹事だったので、上野に決めた。

ちょうど梅の香る季節である。食事のあと、湯島天神まで梅を見に行った。昔は梅林だったという境内には、いま新しく神殿が建って、わざわざ見に行くほど、梅の木がたくさんあるわけではない。それでも梅林の面影を残す場所があって、そこに我々１０名余りが勢揃い。仲間の１人が記念写真を撮ろうとしているところへ、突然男の人が飛んで来て、自分のカメラのシャッタ−を押した。

わけがわからないまま、その人にシャッタ−を押してもらったら？ということになり、お願いしてみた。「その代わりモデルになって下さいね」とその男性はいう。こんなおばさん達に？？？──「右半分の人は右手で、左半分の人は左手でエイッ！ってやって下さい」。なんのことはない。子供が合格してお礼参りに来た母親を演じさせられたのだ。受験雑誌にでも載るのだろうか？　それにしても、受験生がいるような若い年齢の母親なんて居ないのに。



梅林をひと回りしてみた。屋台がたくさん出ている。かりんとうの「花月」も出店していた！　お店の方では１袋が大きくて、いつも千何百円かするのを買うのに、お土産用に可愛い袋に入って、税込み五百円。

「梅祭りということでサ−ビスしています」と３０代後半の男の人。「湯島天神おみやげ」と書いた札も付いているし、誰かにあげようと２袋買った。さざれ（キャラメルコ−ティングしたおせんべい、関西で言うおかき）は無かった。
「今からお店に行ってさざれを買いますね」
「有難う御座います」
「私、花月のファンなの。今日も、皆さんへの案内状に、花月にお連れします､って書いたのよ」
お店の人はニコニコ。

手頃な値段のせいか、皆も次々に買い始める。やはり花月ファンの友達も、一緒になってすすめる。私が「まるで花月の回し者ね。リベ−トは？」と笑いながらいうと、店の人も「お顔をよく覚えておきます」と笑っていた。



屋台を離れ、出口に向かって歩いていると、突然、人が前に立ちはだかった。さっきの花月の人だ。「ありがとう御座いました。これを」と言って、かりんとうの袋を２袋差し出す。あら、リベートのつもりかしら？　びっくりして、「冗談に決まってるでしょ！」というと、「さっきはお店の前だったので。どうぞ。これからも宜しくお願いします」ですって！　「それはそれはすみません！」って、頂いてしまった私……。

先を歩いていた友達を追いかける。「ねえ、私さっき、かりんとうをいくつ買ったか知ってるでしょ？」「２つでしょ？　何よそれ、いくつ持ってるの？！」と、私の大荷物を見て驚く。笑いながら説明すると、「また『おばはんパワ−』って言われるわよ！」と大笑い。

その後、「花月」のお店に行って、「さざれ」を４袋買う。約５０００円。２袋はおみやげ用。あとは自分用。他の人たちも、次々と買っている。「うさぎや」もしかり。この店も、入れ替わり立ち代り、お客が入っていた。

リベ−ト（？！）で手に入ったかりんとうは、風月堂でお茶を飲んだ際、こっそりと開け、皆でお茶菓子として頂いたのだった。風月堂関係者のＭ君、ごめんね。