３月末、関西の友達が上京し、「苦楽園の『Poisson d'Avril（ポアソン・ダブリル）』って知ってる？」と言いながら、お土産のお菓子をくれた。聞きなれない名前で、特に意識もせず、新しいお店ができたのかな？と、そのときは思っただけだった。

焼き菓子とチョコレ−トの詰め合わせだった。何気なく、菓子箱に書かれた文字を見て、AvrilはAprilのことだけど、Poissonって何だったっけ？と考えたが、そのまま。



翌日、近所の人たちと鎌倉と葉山に繰り出し、海の見えるレストランでフランス料理を頂いた。コ−スの中で、前菜、メインディッシュなど、それぞれに選択するシステムなので、メニュ−をじっくり見る。お魚かお肉か？　お魚のメニュ−の上に、「Poisson」。そうか、魚のことだったんだ。

その３日後。芦屋のＫさんから「東京のお花見に参加します」というメ−ルが来た。「あれっ、欠席と言ってたのに？？？」──エイプリル・フ−ルの日だった。からかうことないかな、と思っていたこちらが、すっかり騙されてしまった。



その日、また目の前にあるお菓子の箱に目が行った。「４月の魚」ってことになるけど、ケ−キ屋さんの名前にしては変なの、と昔の仏語辞書を引っ張り出してみた。Poisson＝魚。Poisson d'Avril＝April Fool。えっ？そんな意味？　なんて偶然！　今日のことじゃないの！

でも「４月の魚」と「エイプリル・フ−ル」がどうつながるの？　答えはすぐ出た。新聞に載っていたのである。

特派員報告に寄ると、「４月の魚は馬鹿で、どんどん釣れる」というところから来ているとか。だから、フランスでは、エイプリル・フ−ルの日に、子供達が魚の絵を書いて、相手が気づかないよう背中に貼り付けてからかう習慣があると。



なるほど。それにしても……。ケ−キ屋さんの名前が「４月馬鹿」？？？　その謎は、昨夜、また偶然、解けたのである。

寝る前に読んだ新聞に、フランスに嫁いだ女性のエッセイが載っていた。「４月の魚」の解説と、その頃、パティスリ−（お菓子屋さん）では、魚の形のチョコレ−トを売り出す、ということが。そんな事情を全て把握した、苦楽園のケ−キ屋さんのネ−ミングだったんでしょうね。

友達からのお土産の箱で、ずいぶんいろんなことを知ることになった。芋づる式に情報がつながった、面白い１件だった。