34講

「ポンテオ・ピラトの悩み」

マタイ２７：１〜２６
2002年3月17日

「ポンテオ・ピラトのもとに苦しみを受け、十字架につけられ、、、」使徒信条にユダヤの第６代ローマ総督であったピラトの名が残っているのは、イエス・キリストの苦しみと十字架はまぎれもない歴史的事実であったことを証明している。また、十字架につけた最高責任者はこのピラトであったことも示している。

イエスを死刑にするのはピラトの本心ではなかった。「あの人がどんな悪い事をしたというのか」（マタイ２７：２３）　この人には罪が認められない、と判断したこと。そして、イエスが人々の心をとらえて人気があったことから、祭司長や長老がねたみからイエスを引き渡したことに気づいていた（マタイ２７：１８）からである。また、もう一つの理由は、夢で苦しい目にあったので（マタイ２７：１９）、イエスとかかわらないよう妻から忠告されていたことである。妻の直感的判断は鋭く正しいことが多い。ピラトも従いたかったのであろう。

しかし、結局ピラトはイエスに死刑の判決を下してしまった。扇動された群集の暴動を恐れたからである。また、その結果、ローマ皇帝に失政が知れると失脚する恐れがあった。いわゆる自己保身の故である。過越しの祭りの際の特赦でイエスを解放できないかという意図も群集によって砕かれ、犯罪人バラバを釈放し、止むを得ずイエスを十字架につけることになったのである。「この人の血について、私には責任がない」（マタイ２７：２４）と言い放った。正しい人に対して正しい判決ができなかったピラトの弱さと愚かさを見る。

私たちが自分自身を振り返るとき、ピラトの愚かさに匹敵する、いやそれ以上の愚かさを持っていないだろうか。神よりも人を満足させるために、また、正義よりも自分の身を守るために、本当に正しい方、本当に正しいことを見失い、神の御心にそぐわない判断をしていないだろうか。

ピラトは歴史上に汚名を残したけれども、その役割によってキリストの十字架は成就した。私たちはそのイエス・キリストの血と死によってあがなわれ、救われているのである。神の深いご計画を覚え、その恵みに感謝したい。



わが神、わが神。どうして
わたしをお見捨てになったのですか。
「マタイの福音書」２７：４６

My God, my God,
why hast thou forsaken me?
ST.MATTHEW 27:46