パンフによれば、実はシェイクスピアの数々の謎に基づく別人説というのは、随分昔からあった様で、フロイト、オ―ソン・ウェルズ、チャップリン等もその支持派だとか・・。そもそも、地方出の商人の息子で、海外にも行った事が無いシェイクスピアに、イタリア各地を舞台にした貴族社会の深刻な葛藤が描けたのか？ と言われると、ついナルホド・・と 納得してしまう。

で、その影の作者とされるのが、オクスフォード伯エドワード・ヴィアという人物。貴族でありながら 芝居を見たり書いたりするのが生き甲斐 という変わり者で、立場上、自分の名前では発表できない芝居を、作家のベン・ジョンソンに託して上演させる。芝居は大成功を収め、作者の登場を求める観衆の声に押されて現れ出たのが、たまたま出演していた役者のシェイクスピアだった・・。

この後 次々と上演された「ジュリアス・シーザー」「マクベス」「ロメオとジュリエット」等も大成功を収め、シェイクスピアは当代一の人気作家となって、専用劇場まで立ち上げる様になってゆく。だが、その陰には没落貴族の苦しい財政からも援助を続けるエドワードの支援があったのだ。 ( 映画では口止め料として脅し取られた様に描いている。) 「あんな男への援助は賢明なのでしょうか・・？」と遠慮がちに尋ねる執事に対して、「賢明というのは、私が生涯持ち得なかった美徳だ」と答えるシーンが印象に残っている。

このオクスフォード伯エドワードが、実は若かりし頃、エリザベスと愛人関係にあったとかで、その仲を裂いて娘と結婚させ義父となった宰相ウィリアム・セシル 及び その息子 ロバート・セシル父子と彼との間で、王位継承をめぐって暗闘と陰謀が繰り広げられる・・と云うもうひとつのドラマが展開される。( ま、どこまでが史実で どこからがフィクションか、判りかねますが・・。)

エリザベスには愛人が何人も居た、というのは、映画「エリザベス」や「エリザベス: the Golden Age 」等で知っていましたが、今回はなんと隠し子も数人居た、という上に 近親相姦まで匂わせると云う驚きのストーリィ。( これも フィクションかどうか不明ながら、ま、話としては刺激的で面白い。)

前２作の颯爽とした女王とは異なり、今作での女王は愛憎に悩み 長年の政務に疲れた人間的なエリザベス像で、年老いた権力者の悲哀を感じされられました。

＊ ちなみに、「エリザベス: the Golden Age 」については下記をご覧ください。

http://7ten.world.coocan.jp/class/ohara/eiga17.html

実は、この機会に修正したい事があります。上記の映画紹介の中で、「アルマダ海戦で火船を使って焼き打ち攻撃した、というのも史実かどうか？」と書きましたが、調べて見ると史実だったようで、映画も結構マジメに作ってるんだな、と感じた次第です。

蛇足：今作の監督Ｒ・エメリッヒというのは「インディペンデンスデイ」などのＣＧで知られた監督だけに、１６世紀のロンドンを見事に再現して見せてくれています。