中でも、シャワー中の時だけ素晴らしい歌声で歌える、という特殊な才能を持つ葬儀屋の親父に、ウディ・アレン扮する老オペラ演出家が惚れこみ、スッタモンダの末 プロデビューさせるという第１話が、バカバカしくもハジケるおかしさです。

( ネタバレになって恐縮ですが・・・ )シャワー中でないと本領発揮できない彼の為に、アレンが考えた仕掛けとは、なんと！舞台に台付きのシャワーを引っ張り出して、そこで裸でシャワーを浴びながら歌わせる、という演出。このバカバカしくも愛すべき役を見事に演じてるのが、ファビオ・アルミリアートという有名な本職のテノール歌手というのだから、演じる方もエライものです。

第２話は、田舎から新婚旅行に出て来た純朴な若夫婦が、引き起こすドタバタ。若妻が美容院へ出かけた間に、突然部屋にチン入するのが、ペネロぺ・クルス演じるセクシーな娼婦。「何かの間違いだから帰ってくれ」と押し問答している最中に、運悪く親戚の叔父叔母たちがやってきて、娼婦を呼んだと誤解されては困る、と、彼女を「妻だ」と紹介してしまう、という 吉本新喜劇的な展開。

現代のモンロー、ぺネロぺも 御年３９才。出産もしたそうで、さすがに中年体形になっているのは残念ですが、ますます色香たっぷりのイイ女っぷりを見せてくれます。今やアカデミー受賞女優の彼女が蓮っ葉な娼婦役を演じるなんて、やはり「それでも恋するバルセロナ」のアレン監督の作品だからなのかな・・？ と思ったりもします。街に出て迷子になった若妻の方は、偶然 大好きな映画俳優に出会い、一緒にランチからホテルまで同行、という、これまたノーテンキな展開の後 更にハプニングが・・・。

閑話休題：
欧米の役者はアカデミー賞を取ったからといって、カッコつけたりせず、コメディやセクシーな役にも こだわりなく取り組みますね。例えば、2010年に「英国王のスピーチ」で主演男優賞を取ったコリン・ファースは、前回書いた様に「モネゲーム」で、ドジな男を演じてますし、2001年 主演女優賞のハル・ベリーは翌年「００７ ダイアナザーデイ」でセクシーなボンドガールを演じてます。ぺネロぺも 2008年に「それでも恋するバルセロナ」で助演女優賞を取ってますが、今回みたいな色っぽい役も嬉々として楽しんでる様です。

第３話は、ある日突然有名人になり、マスコミから追いかけまわされる事になった平凡な男の物語。これも、ま、あり得ない話なのだが、マスコミに対するカリカチュアとも言えるのかも・・？　毎日 朝から晩までカメラマンやインタビュアーに付きまとわれ、些細な事にまでコメントを求められる有名人というのは、ツライものだよ、というアレン爺さんのボヤキが聞こえてきそうです。

この気の毒な主人公を演じるのが、名作 " Life is Beautiful " (1997) の監督・主演を務め、アカデミー賞も受賞したイタリアの人気コメディアン、ロベルト・べ二ー二。なんとも言えない 気の弱そうな情け無い表情が、ピッタリで、「そんな、バカな・・」と思いつつも、ドラマに引き込まれてしまいます。

第４話は、長くなるので、見てのお楽しみ、という事で、この辺で・・。ただ、この話の主役が「ソーシャルネットワーク」で フェイスブックの創設者、ザッカ―バーグを演じたジェシー・アイゼンバーグだという事だけ紹介しておきます。( 余談ながら、小生はその映画を見てないので 知りませんでした。)

冒頭と最後のシーンでは 有名な「ボラーレ」が流れ、途中では「アルヴェデルチ・ローマ」がＢＧＭで使われたり、第１話ではオペラの曲が歌われたり、と、音楽も十分楽しめました。

バルセロナ、パリ、ロンドン、と、都市観光を兼ねたみたいな作品が続くアレンですが、今作でも、トレヴィの泉、スペイン階段、等 いろいろなローマの観光名所が楽しめます。さて、次作はどんなものになるのか・・？　楽しみです。