真相は一体なんだったのかと、今でも不思議。

あれは、カナディアンロッキ−の観光に出かける日の朝だった。私たち１行３名は、バンフから出発するバス・ツア−に参加するため、宿泊先のカナナスキスのホテルで午前６：４０に朝食のお弁当を受け取り、６：４５に出発することになっていた。

初日からの例で、前夜着る物を揃えておけば、起きてから部屋を出るまで３０分あれば余裕という日々だった。６：３０に部屋を出るため、前夜、私のＰＨＳのアラ−ムを６時にセットして寝た。ＰＨＳは日本時間のままだ。時差を考慮しなければならない。ええっと、昨日は６時に合わすには１８時にすれば良かったんだけど、今日は３時間の時差だからぁ、そ、１５時でいいわけね。

翌朝、電話が鳴った。私が取ると、テ−プだか生の声だか判らなかったが、最後に「six thirty」と聞こえた。ツア−に組み込まれているスケジュ−ルの日は、頼まなくてもモ−ニングコ−ルがかかるが、自由行動の日もあるので、毎朝かかるわけではない。特に意識せず、「モ−ニングコ−ルだわ。six thirtyですって」と同室の義妹に声をかけると、「えっ？！　６時４５分に出発ですよ！」と言う。

ところがホテルの部屋の時計は５:３０になっている。ＴＶをつけた。ニュ−スをしていて、なんと７:３０！　なぬ？！　もう訳が判らない。よく見ると、次の画面ではいろんな時刻が並んでいる。州ごとに時差があるのだ。ところが前夜着いたばかりで、ここが何州だか判らない。とにかく支度をしなきゃ、ということで、大慌てになった。

一番先に支度の出来た私が、先に下に降りた。フロントの人に、
「Excuse me. What time is it, now?」
と聞くと、彼は自分の腕時計を見ながら答えた。
「Six forty-five.」
「Six forty-five?!」
「Yes.」
「Did you see any Japanese here around six forty?」
「No, not yet.」
「Thank you.」

さぁ大変！私たち以外にバスに乗る人は居ないんだろうか？　また部屋まで上がって、「やっぱり６時４５分ですって！」と、今度は皆でばたばたと降りる。お弁当を受け取る場所に行くと、まだ６時１０分前ですから、お弁当は届いていません、と言われる。ひどい！　フロントを見ると、さっきの人が居ない。

また皆で部屋に戻った。その上、６時と思われる頃、ＰＨＳのアラ−ムは鳴らなかった。それまでは、これで起きていたのに。電話としては使えないので、電池の節約のため、電源を切った。

中学英語である。しかもsixとfiveを聞き違えるはずがない（はず）。フロントの人の時計は一体どうなっているんだろう。

正しい時刻と思われる頃、階下に行く。今度はロビ−に日本人が集まっていて、フロントにはさっきの人が居る。同じ人間が同じ質問をするのも変なので、義妹に「もう１度貴女から時間を聞いてみて」と言うと、「もういいですよ」と、今更，という雰囲気。彼の時計が間違っていることを確認したかったが……、諦めた。あの時、「Not five forty-five?」と聞くべきだった。そうすれば、はっきりしたのに。

夜になって、よく考えると、１８時マイナス３時間じゃなくて、プラス３時間にセットすべきだったと判明。翌朝は、２１時にセットして、正しく６時に起きたことは言うまでもない。