請勿詰難　請勿返品
雅虎拍売城
公元2008年８月

チベット特集

チベット絵画
「チベット踊りのチベット人と楽器を吹くラマ」
油彩　縦100cm　横77cm
初値100円→２入札→落札1000円
下掲経典と同梱で送料1500円

この絵を手に入れようと決めたのは、家族全員が買うことに反対したからである。奥さんも娘たちも絶対反対。夢に出てきそうだから、どうぞ思いとどまってほしいと懇願された。にもかかわらず、応札。天の邪鬼な気持ちからではなく、この世にこれほど忌み嫌われる絵があるだろうか、と不憫になったからである。もし、自分が名乗り出なければ、誰からも、永久に購入されないであろう絵。買うことが、自分の使命であると思った。値段も初値100円と極安だし。

1000円で指し値しておいたところ、意外にも競り合う者が現れ、999円と１円差にまで迫ってきて、不可解なことに、そこで引き返していった。で、めでたく（？）落札。絵ははるばるチベットのラサから、ぐるぐる巻かれたうえ、紙の筒に入れられ、EMS国際スピード便で送られてきた。

それにしても、なんという不思議な絵だろう。「チベット踊りのチベット人と楽器を吹くラマ」という標題からすると、ラマ僧の右に立つ化け物は、チベット踊りの踊り手ということになるが、現代人の想像力を超えた形象である。遠い星からやってきたように見える。おまえはいったい何者で、いったい何をいいたいのだ、と、思わず聞きただしたくなる。



わしが何者か知りたい？　まあ、知らぬほうがええ……

いちおうキャンバス地に油絵の具を十分に使って描かれている。画風はスーパーリアリズムで、遠近法に忠実、足下の草むらなどは、葉っぱの１本１本を、実に丁寧に描き出している。どうでもいいところに手間暇かけるのが、チベットの美学かもしれない。

へなへなしたキャンバスのまま放っておくわけにはゆかないので、画材店でF30のフレームを買ってきて貼り付け、ホームセンターで木ぎれと留め金を仕入れて、簡単な額縁を自作、装着したのが、冒頭の写真。現物のサイズがF30より大きかったので、額装に伴い、上下左右が数センチずつ蹴られた。

チベット仏教三仏経典
本文印刷　画像手描き　縦7.2cm　横22.8cm
初値9000円→落札　上掲絵画と同梱で送料1500円



経文は全部で10枚。写真では５枚を割愛

上掲絵画と同じ出品者である。日本国内に代理人はいるが、本店はチベットのラサであるらしい。チベット仏教の神像やタンカ、装飾品を多く出品している。粒がそろっているが、値段は２万円前後から10万円を超えるものもあって、相応に高い。

これは、チベット仏教のお経である。横に細長い紙の表裏に経文が書いてあり、それを手前から向こう側にひっくり返しながら読む。紙は１枚１枚ばらばらになっているので、散逸しないよう、普段は木製の表紙と裏表紙で挟み、輪ゴムやヒモでくくってある。表裏の表紙の木の劣化具合からみて、古いものではなさそうだ。

かつて、四川省成都で仏像とチベット文字を描いた不思議な板きれを買い、のちにそれが経典を収める箱の蓋（写真下）だと判明した。チベット寺院は、たいてい膨大な経典を収蔵していて、その箱がうずたかく積み上げられている。僧侶は信者の求めに応じて、箱から経典を取り出し、やはり、手前から向こうにめくりながら、読んで聞かせるのだという。

成都で買った経典箱の蓋。72cm×31cmと大きい



額装に凝って、３万円以上かかった

今回ゲットした経典は、サイズからいって、その家庭版か携帯版ともいうべきものだろう。チベット関係の古玩店でも見たことがなかったが、昨夏、敦煌の文物商店で初めて同じものに遭遇した。値段を聞くと、想定外の数字をいわれたので、すぐあきらめた経緯がある。正確な数字は覚えていないが、こんどの価格はそれに比べて、リーズナブルに思えたので、入札した。

海外からの出品は、現物の値段は安くても、送料１万円とかふっかけてくるケースがある。この出品者は、送料もリーズナブル。それに、保険（２万円まで保証）をかけたほうがいい、掛け金400円なので、と薦めてくれるところにも、好感が持てた。

チベット仏教五仏経典
本文印刷　画像手描き　縦8.5cm　横34.5cm
初値1万3200円→落札　送料1000円




上：表表紙　下：裏表紙

上掲の経典を落札して日を置かず、同じ出品者が似たようなものを出してきた。先のよりサイズがやや大きく、なにより、木製表紙を飾る仏像の数が、先の３つから５つに増殖している。しかも、銅に24Kメッキだという。コレクター魂を大いに刺激され、値段は５割方高かったが、ままよとばかり応札。この分野に興味を持っている者が、まだ少ないらしく、今度も無競争で落札。



経文は全部で10枚。写真では５枚を割愛

ところが、そのまた２、３日後、同じ５仏だが、経文本文の彩色仏さんが、１ページ１人から２人に増えているやつが、やはり同じ出品者から出てきた。値段は１万9700円で、またまた５割増し。さすがにつきあいきれず、手出しせずに見送ると、入札者の現れないまま、波のまにまに消えていった。値段をうんと下げて、また出てきたら、応札してやってもいいと思っている。

チベット仏教二仏経典
本文印刷　画像手描き　縦7.8cm　横16cm
初値2200円→落札　送料1000円



表紙と裏表紙の図柄が同じなので、
見返しが見えるように配置。
経文は全部で10枚。写真では５枚を割愛

そのまた数日後、こんどは２仏のが現れた。木製の表紙も本文の彩色仏画もあっさりしていて、値段も安い。もちろん、同じ出品者。キリがないように思え、ちょっと躊躇はしたが、値段が手頃だったので、結局応札。

この出品者は、「弊店の開業は、チベット仏教上に偉大なる化身ラマのダライ・ラマ五世に捧げるものです。『偉大なる五世』と呼ばれるダライ．ラマ5世ガワン．ロサン．ギャッツォ（1617-1682）は、偉大な学僧であっただけでなく、モンゴルの後ろ盾を得て、1642年に政教両面でチベットの最高指導者となった。以来、歴代ダライ・ラマは、チベット第一の都市であるラサ市を政治基盤とし、ゲルク派序列第一位の僧侶であると同時に、チベット全域の政教両面の最高指導者であり続けてきた」と高らかに謳い上げている。投じたお金が、チベット文化の振興と政治的和平の一助になるなら、けっこうなことである。

古玩城の闇鍋 千円陶磁の世界 瑠璃釉亀形水滴 伝李朝　長さ８cm　幅5.5cm 初値1000円→４入札→落札2200円　送料820円 李朝時代のものだという触れ込みである。水の注入口が排出口より小さいので、朝鮮の製品ではあろう。李朝には手を出さないことにしていた。その禁を破ったのは、甲羅のデザインが、甘粛省蘭州で、大枚5000元（８万円）をはたいて買った贔屓の水滴（写真下）に通じるところがあり、親亀・子亀みたいになっておもしろいかも、と思ったからであった。 ただ、これが本物の李朝であるかどうかは、まったく不明。贋物である可能性が高い。というのは、同じ亀がヤフオク上に大量に出回っているのだ。いずれも初値1000円。＋200円で、３回ほどナンピンをかけてみたが、そのたびに競り合ってくる者が現れ、どうやら業者仲間で入札しあって、高値に誘導しているような気がする。いずれにしろ、怪しい亀である。 5000元の蘭州贔屓水滴 鉄釉亀形水滴 長さ4.8cm　幅４cm 初値2000円→落札　送料840円 これも朝鮮製との触れ込みだが、注水口が大きいので、中国製である可能性がある。実用に供せられた痕跡がうかがえるが、痛み具合からみて、そんなに古いものではなさそうだ。先の瑠璃釉の亀よりひとまわり小さく、孫亀といったところか。 仲よきことは美しき哉 緑釉蟾蜍形水滴 長さ15cm　幅８cm 初値1000円→落札　送料620円 見たとおり、これは亀ではなく、蛙である。正確にいうと、蟾蜍（せんじょ）という３本足の架空動物である。初値の1000円のままなら買ってもいいかと、応札しておいたところ、落ちた。同じような蟾蜍の水滴が手元に２つばかりあるので、それと仲よく飾っておけばいいかと。 仲よきことは美しき哉