３嫁（年の順に私、Ｙ、Ｓ）で温泉に行くことになった。Ｙの知り合いの薦めで、修善寺の旅館に決定。Ｙから名前を聞いて、パソコンで検索してみると、その旅館では１２月８日まで紅葉狩りのバス（３時から４時）を出していると書いてあったので、早速Ｙに知らせる。

旅館に着くとすぐ、ロビ−でケ−キとハ−ブティ−のサ−ビス。部屋に案内する人からは、「３時から３時４５分まで、コ−ヒ−やお汁粉のサ−ビスがありますので、ロビ−にいらして下さい」とのこと。バスの時間と重なると思ったので尋ねると、首をかしげて、「２日前に終わったんですけど」と曖昧な返事。「聞いておきます」と言ったものの、その後部屋に落ち着いても、返事がなかった。

浄蓮の滝を是非尋ねたい。お汁粉を食べてからだと暗くなっても困るし、先に行くことにした。念のため、フロントで紅葉狩りのバスの件を再度尋ねる。ここではまだ紅葉が綺麗だけれど、滝周辺ではもう葉が散り始めているので、昨日で（さっきの人と１日ずれてる！）終わったとのこと。何度か同じことを言う。それでは仕方がない。

河津行きのバスを待って、整理券を取る。最初１６０円だった料金が距離が増えるに従って上がるのは当然だけれど、上がりかたが激しい。１０分乗って３７０円で到着。

浄蓮の滝は、玄武岩を背にし、水しぶきを上げながら、シャ−ベットのように真っ白な水をたっぷりと落とし、とても美しかった。



まだ２時過ぎ。これから旅館に帰ると、３時までには戻れ、お汁粉と温泉だけで終わってしまう。最高の散策日和だし、地図で見つけた滑沢（なめさわ）渓谷まで足を伸ばすことにした。乗り継ぐバスはまだ当分来ない。タクシ−を見つけたのでどのくらいで着くか聞いてみると、渓谷の説明ばかりで質問への答えが返って来ない。要するに近いので行きたくなかったのだ。お土産やさんで時間潰しをし、またバスに乗る。

今度は、２３０円で到着。バスはここまでしか行かない。渓谷を下に見る砂利道を３０分ほど歩くと、樹齢４００年の太郎杉に辿り着いた。白く干からびたような太い幹に、ブロッコリ−のお化けのような葉をつけ、威風堂々とした杉の木だった。

戻りかけたとき、１台のバスがやって来た。Ｓが「乗せてってくれないかなぁ」と小さな声で冗談を言いながら戻る。途中から、渓谷沿いの道に下りて歩く。

暫く行って、元の上の道に出ると、バスが停まっていて、団体さんが写真を撮っていた。さっきのバスかしらね、などと言いながら先を行く。途中で後から追い越される形になった。山道は狭いので、３人で崖の山側に身を寄せる。バスがノロノロとすれ違っていく。



突然、バスの運転手さんが、「ひょっとして、Ｓ旅館の方ですか？」「イチョウの方？」と聞く。「イチョウ？」「あ、はい、銀杏です」。部屋の名前だった。彼の話によると、バスを出そうと希望のお客さんがいるかどうかフロントに聞くと、既に銀杏の部屋の我々が散策に出たことを知ったという。なぁんだぁ！　

「まだこれから３０〜４０分廻りますので、よろしければお乗り下さい」と言われ乗り込む。「申し訳ありません、高いバスに乗って頂いて」「何かサ−ビスさせて頂きますので、ほんとに申し訳ありません！」。乗車中、弁解しきり。

天城トンネル、その先の二階滝（にかいだる）まで案内され、旅館に戻る。私達より大分年配の方々が、「思いがけず案内して頂けて、幸せでした。ありがとうございました」と運転手さんにお礼を述べて、降りて行かれた。ＨＰなど見そうにない年齢の方だから、旅館に着いて初めて紅葉狩りのバスを知り、感激しているのだ。初めからバスのことを知っていた私達が、拒否されたというのは皮肉。それでも、途中で出会い、気づいて下さったのは幸運かも。予定外の場所にも行けたし。

旅館には、大小１１ものお風呂があり、夕食前、寝る前、翌朝とあちこち廻って、温泉を満喫した。どのお風呂もとても清潔で、数が多いせいか、他のお客さまと殆ど出会うこともなく、快適だった。

チェックアウトのとき、フロントには同じ人が居たが、バスの件については何のお詫びの言葉もなし。駅へのバスの待ち合わせで、ロビ−でコ−ヒ−を飲む。いよいよ靴を履く段になって、玄関の仲居さんに、「ちょっとお待ちください」と止められる。女将さんらしき人は電話中。バスに後３分しかないのに！　電話が終わり、昨日のバスの件で詫びがあった。「申し訳ありませんでした。これをお持ちください」と、もろみ味噌とわさび海苔のちいさなパックを頂いた。

気は心。それにしても、もっと早く部屋に届けるなり、ロビ−での喫茶中に持ってくるなりすれば、もっと好印象を持てたのになぁ。