大阪郊外に実家があった頃、近所の家具のショールームで見た食卓に、一目惚れしました。長方形のテ−ブルの中央に、寄せ木になった模様がある物です。

結婚時以来の食卓（義母が用意してくれた小さい物）を買い換えることにし（実は、今も別の部屋で利用）、上記と同じ物を探し廻りましたが、東京ではどこにも見つからず、大阪のショールームに聞いてもはっきりしませんでした。ところが、マンションを改装した折、偶然にも、改装を頼んだ設計事務所と取引きがあるメーカーの製品だと判り、代々木のショールームを訪ね、無事購入できたのでした。椅子は、同じメーカーでも、セットになっている物より他のシリーズのが気に入り、テーブルの色に合わせて、塗装を変えてもらいました。

来客時は食卓で接客するので、大きな物は無い方が部屋が広く使えると、夫の欲しがるごろっと寝転ぶソファーを、拒否し続けて来ました。以前あった実家からのお下がりは、修復不可な部分もあって、かなり前に、思い切って粗大ゴミに出し、ここ数年ソファーなしの生活を（私だけは）気に入っていたのです。



ところが、夫は、通販で、安物のリクライニングの椅子を、自分専用に買ってしまいました。フローリングではごろ寝も出来ず、余程くつろぎのスペースが欲しかったのでしょう。ちょっと見には悪くないのですが、パイプ製で、動く度にギシギシと音がしてやり切れません。我が家に泊まりに来た親兄弟も、みんなが認める不快音です。

そんなこともあって、やはりソファーを買ってあげようかな〜、と考え始めたのです。そんな或る日、背面が木の格子で出来てたソファー（正式にはソファーベッド）が眼につきました。う〜ん、和風好みの私の趣味にピッタリ！　店員さんから、メーカーは北海道のＩ・Ｃだと言われたとき、頭にぴかっと光るものがありました。昔のことで忘れていましたが、我が家の食卓のメーカーに違いない、と閃いたのです。

でも、家に帰って、テーブルの下を覗いても、椅子をひっくり返してみても、メーカーの名前が全くありません。パソコンで検索もしましたが、出てきません。全く商売気のないこと！　食卓と同じシリーズのソファーがあればベストだと、代々木のショールームを探し歩こうかとも思いましたが、方向音痴の私が、１度行っただけの場所に行ける筈もありません。



そうだ！と思いついて、マンションを買ったときの書類を持ち出したら、１３年前に改装したときの食卓の領収書が残っていました！　確かに、Ｉ・Ｃでした。でも、そのメーカーのショールームには、Ｃ・Ｈと言う別の名前がついていたのです。ややこしい！　今度は、Ｃ・Ｈで検索。やっと、詳細が判明。

早速、代々木に行ってみました。駅から歩いていくうちに、遠くに見えるビルがあれだわ、と記憶が蘇りました。狭いショールームをじっくり眺めていたら、担当者が近づいてきました。残念ながら、同じシリ−ズは廃番とのこと。背面が格子のソファーは、そこにもありました。布を黒革に変更し、塗装を変えた場合の見積もりもしてもらい、カタログを貰ったところ、「座面が畳のように固め、ごろ寝やあぐらをかくのに最適」と書いてありました。夫の理想とするところです。

夫に写真を見せると、「いつまでも考えてるより、とにかく買って！」と。私の思い通りになるので良いと言えば良いのですが、相談相手にはなりません。決断力のない私は、趣味の合う友達に現物を見てもらい、賛同を得、その間、担当者は私の迷っている点をメーカーに聞いておいてくれたので、納得。やっと注文に漕ぎ着けたのでした。

鉄瓶の時のように数多く物色した訳ではないのに、今回もまた同じメーカーの家具に惹かれたことには、赤い糸を感じます。見初めた後、短い交際期間を経て、１ヵ月後に我が家に嫁いでくる（私が選んだんだから婿入りする？）のを、いま楽しみにしているところです。食卓同様、我が家に馴染み、末永く可愛がられますように。