私が通っているプールの女子更衣室は、いつも賑やか、というかヤカマシイです。芸能人の離婚などあろうものなら大変。全員が「結婚問題評論家」「離婚コメンテーター」と化してワァワァギャーギャー状態に。もちろん私も、Ｘ氏の離婚事件などひっさげて、トト交じりするのですが、「そんなん、ようあるこっちゃ！」と軽くあしらわれてオシマイ。そこに集ったオバサマ、オバアサマがたの話によれば、「いまどき、熟年離婚の悲惨な話なんかどこにでもゴロゴロしている、なんも珍しくない！」のだそうです。そうか！

いろんな離婚話が出た中で、Ｓさんが話していた、彼女の友人Ａ子さんの件は、ちょっとほのぼの（？）していて、「へえ〜、そんなこともあるのか」と思いました。

Ａ子さんのご主人が定年退職される日のことです。（やはり、「定年退職の日」というのは鬼門みたいで、女房たちがコトを起こす絶好の機会になるらしい。）

Ａ子さんは、殊勝にもご主人のために「退職祝い」のお膳をこしらえて食卓に並べる一方で、自分の出奔用ボストンバッグの最後の荷造りにも追われていたそうです。

ご主人が帰宅されるとすぐに、「あなた、長年お仕事ご苦労様でした、私、このたび、勝手ながら家を出させていただきます・・」と、お決まりの出奔挨拶を述べます。すると、これもお決まり、「吃驚仰天、大狼狽した」ご主人が、「な、なんでや、　急に！？　何が気に入らんかったんや〜！」となって、「私が病気で寝込んでいる時に、会社から帰ったあなたは枕元に突っ立って『メシの用意どうする気やねん？』と、冷たく言い放たれました・・・」云々かんぬん、ツラツラと積年の恨みを述べたＡ子さん。

絶句して立ち尽くしているご主人に、「とりあえず、私は姉妹の家に参ります。では、新幹線の切符も買ってございますので失礼致します」と、ボストンバッグを手に玄関を出ようとしたら、突然、ご主人がＡ子さんの足に取りすがって、「頼むから出て行かないでくれ！　明日から、心を入れ替えて努力するから」と涙ながらに懇願されたそうです。「いいえ、出て行きます！」「待ってくれ！」「出ます！」と、長いこと玄関で揉み合っているうちに、新幹線の時刻に間に合わなくなって、その日はＡ子さん、出奔を断念。



さあ、翌日からのご主人の豹変ぶりは見事だったそうです。家事は手伝う、Ａ子さんの買い物から習い事まで全部、車で送り迎えをする・・・とにかく、下へも置かない大事にしようで・・・。

その話をしてくれた、プール友達のＳさんによれば、その出奔未遂事件から数ヶ月経つけれど、まだＡ子さんは、そのまま、ご主人にかしずかれつつ、優雅な日々を送っておられるとのこと。

最近、Ａ子さんがＳさんに漏らした言葉は、「主人は人が変わったみたいによくしてくれるけれど、これはこれで、毎日鬱陶しいわよー！」だそうです。そうやろね〜！。

ま、Ａ子さんちでは、結局、「妻の家出未遂」で終わりそうで、よかった、よかった。Ａ子さんもご主人も、普段からもっと「小喧嘩」をしっかり派手にやっておけばよかったのにね。でも話を聞いた印象では、ご夫婦とも、すごく素直な、可愛げのある人みたいだから、関係修復可能で、最終的な破局は避けられたのかも？

まさに夫婦もイロイロ、破局もイロイロですわ。

七期天国男性諸氏も、来年あたりから、何やら恐ろしげな「定年退職の日」を迎えられるわけですが、そろそろ女房殿の顔色と身辺の気配を窺いつつ、わが身を慎み、改めるべきところは改めていかれるのが上策かと思われますゾ。おのおの方、油断召さるな！

「もう、今となっては遅い、改めようがない！」と感じておられる向きには、今からでも出来る秘策をひとつ。

それは、今まさに出奔せんとする女房の「足元に一発できめるタックル」、この猛練習ですゾ！　これしかない！（ハイタックルは危険、傷害罪になる恐れあり。腰の辺りへのタックルは、女房にズルズル引き摺られる格好になりがちで、いかにもみっともない姿でござろう。）