ふと目に触れた新聞記事の見出し。そこには、「ひき逃げ自供させたチラシ」とありました。あっと思って読み始めると…。

１５年前、次男が中学受験間近の頃、同じ塾のお母さん仲間との雑談の中で、１人がこんな話をなさったのです。その方は、昔、お子さんをひき逃げされ、印刷屋さんだったことから、事故を目撃した方はありませんか？というチラシを作り、毎日毎日現場に立って、通る車に渡し続けたそうです。或る日、事故を見たというトラックが目の前で停まり、彼の話から、犯人が捕まったとか。

偶然にも、その話は、昔（後からその１０年前と判明）、やはり新聞記事で読んだことがあり、悔やんでも悔やみきれない親の心情を感じて、印象に残っていたものですから、当のご本人を前にして、「えっ？！あの時の方だったの？」と、びっくりしたものでした。

今度の記事は、その印刷屋さんが、近くでひき逃げ事故が起きた時に、無償で同じようなチラシを作り、家族ぐるみで情報提供を呼びかけてきたということで、先日、１つの事件が解決したことを伝えていました。同じ目に遭ったとは言え、他人にまでそういうことができる人は多くは居ないでしょう。



子供達が別々の学校に進学し、そのとき１度しかお目にかからなかった方なので、お名前すら覚えていませんでしたが、きっとそうに違いない、確認したい、という気持ちになり、電話番号を調べて、恐る恐るかけてみたのです。

若い男性が出られ、こちらが名乗り、記事を見たこと、息子がＴという塾に居たことを言い出すと、すぐに「あぁ、Ｍ君は僕と一緒でした！」と覚えていて下さって、嬉しくなりました。お母様とも、１５年ぶり、人生２度目のお話をしました。感激したことを伝えると、「少しでも、ご家族の心が和むなら」と。

悲しいことに、私の友人にも、交通事故で、当時小学生だったお子さんを亡くした人が居ます。病院に駆けつけた私の前で、全く反応のないお子さんに呼びかける彼女の姿が痛ましく、帰り道、涙が止まりませんでした。他人の為にあんなに泣いたのは、初めてのことです。そのことがあったのが、同じ１５年前、冬の寒い日のことでした。

この事故の直後に、印刷屋さんが、私もそうだったのよ、と話されたので、私にとって余計に忘れられないのです。