ふと、母にゼラニウムを送ってあげようかと思ったのは、午後になってから。直径３０ｃｍの鉢にぎっしり茂った、でもお行儀よくまっすぐに育った、高さ９０ｃｍのものを選びました。蕾もまだまだいっぱい（写真　中央の白い鉢）。

宅配便は何時までに出せば、今日の発送になるのかな？　領収書があったので、近くのコンビニに電話。４時までに持って行けばいいと。
「お花を送るための、宅急便の箱はありませんか？」
「こちらでは用意してないんですよ」
「じゃ､自分で適当に包んで持っていけば、扱ってくださいますか？」
「はい、大丈夫ですよ」

今３時過ぎ。まだ間に合う。じゃ、今日送りましょう。大きなビニールの手提げ袋に受け皿を入れ、よいしょっと鉢を持ち上げて入れました。上から大きな透明のビニール袋をかぶせ、セロテープで上下を留める。和紙で鉢を包み、リボンで結ぶ。上の袋には、はさみで空気穴をぶすぶすと何箇所も。うん、プレゼントらしくなった！



３時４０分。１分ほどの距離を、抱えて持って行く。それを見た途端、店員さんが、箱に入れないと、このままでは送れないと。
「えっ？　今適当に包めば扱ってくれると電話で確かめて持ってきたのに！」
「女の子ですか？」
「男の方」
男の子の店員２人が、不思議そうに顔を見合わせて、
「この店ですか？」
コンビニは、この店しか利用しないもん。３時に電話をしたと言っても、
「この１時間ほど､電話はありませんが」
なんて言われて…。

１人がお待ちくださいといって、奥に引っ込んだきり、なかなか戻って来ません。かなり経って、奥に居た人が電話を受けたこと、形はきちんとしていなくても、箱には入れると思ったと言っているとか。裏に適当な箱がないか探してくれたらしいけど、無かったそうです。

「本部なら箱もあるでしょうし、集配に来てもらうのが１番と思います」と言われ、電話番号のメモを貰って、また抱えて帰る。

４時５分。早速電話。すると、箱どころか、花は扱っていないので、受け取れないとのこと。また話が違う！　３時からの事情を話すと、それでは集配には行くが、ドライバーの判断次第ということにして欲しいと。駄目元と承知。７時までには来るそうで、受け取った場合は、８時頃、出発することを確認。

６時５０分。まだ来ません。ちょっと庭に出た隙に来たなんてことは？！　連絡はちゃんと行ってるのかしら？また電話。今度は別の人。まだ時間にはなってないけれどと断って、待っている旨を話しました。すると、花は取り扱っていない、その包み方では送れないので、集配に行っても仕方がない、と。段々否定度が高くなる！



初めから駄目と判れば、こんなに苦労しなかったのに。希望的観測を言われるから今に至ったのに。３時からバタバタしたのは何だったの？　その後３時間も、買い物にも出ず、家に居たのに！のに、のに､と悔やむ。すっかり、「今日中に発送モード」に入っていたので、諦めがつかない。

可哀想に思ったのか、「ドライバーにもう１度連絡します」と。その後、「渋滞に巻き込まれ遅れています。７時１５分頃には着くでしょう」と、さっきの人から電話。ちょっぴり親切。

ピンポ〜ン！来たぁ！
ドアを開けた途端、…やっぱり断られました。箱にすっぽり覆われていないと、と何度か聞いた台詞。何とかそっと持って行きますよ、という言葉を期待していたけど、そんなに甘くはありませんでした。

でも、その瞬間やっと閃きました！　着物用の段ボールがあったんです。
「横長の箱を立てても大丈夫？こっちが上とわかる？」
「それは大丈夫ですよ」
「今、ここで包むの５分ほど待ってくださる？」
「いいですよ」

古着を入れていた段ボールの中身をひっくり返してみると、浅くて、鉢がはみ出るのは一目瞭然。駄目だわ、と諦めかけた時、「形がいびつでも」と言ったコンビニの店員さんの言葉が蘇りました。「きっちり閉まらなくてもいーい？」　丈は測ったかのようにピッタリ。手前が少し開くのを、ガムテープで留める。ドライバーのお兄さんが手伝ってくれました。

玄関を入ると、出て行くまで足踏みをしているとまで言われる、忙しい宅配便の世界。よくぞ待っていて下さいました。手の塞がったドライバーのために、ドアを開け、せめてものサービスをして送り出しました。「明日午前中に届けてね。ありがとう！」

「こんなに立派なのを！」。母から、驚きと歓びの声で電話がかかったのは、言うまでもありません。