友人Ａ氏の話です。

彼は、先頃、長年の会社勤めを無事に卒業して、ホッと一息、のんびりした生活を楽しんでおられる様子でした。

ところが、退職後ひと月ほどした頃、Ａ氏は、突然、会社の若い人から、「オッサン、ちょっと顔貸せ！」と、某所へ呼び出されたそうです。直接の部下じゃなし、一度も仕事では付き合いのなかった人たちからの呼び出しに、「いったい何事だろう？！」と、少しビビり（？）ながらも、「ま、いいか、何かあれば上手にゴメンナサイと言って、土下座して逃げてこよう！」と腹をくくって、Ａ氏は某所へ出向きました。

そこには、入社１０年以内のとても若い連中が７人も、手に手にドスを持って（え？　ドスは持ってなかった？）ずらりと並んでいたらしい。（中には、生意気にも姐さん同伴の者も２名いた模様。）

顔ぶれに思い当たる節がなく、戸惑っているＡ氏に向かって、彼らのいわく、
「Ａさん、われわれ、あなたには、もっと色々教わりたかったんや！」と。（オ〜ッ、やるねえ、若い衆！）
「最近は、職場で熱く付き合うこともないし、先輩に食ってかかることも出来ない！　表面的なことしか喋れない・・・とても残念です」

そうか、Ａ氏は会社でも、「熱い」人だったんだなあ、きっと・・・。後輩に思いの丈をぶつけ、先輩や上司に向かっても、ひるまずにギャオギャオ吼えて、各方面と角突き合せてやってこられたのでしょう・・・。会社の主流だったか、傍流だったか、そんなことは知らないけれど、直接の部下でなかった若い人たちまでもが、そういうＡ氏の人間臭さ、熱さ、青さ（？）、スーツ姿の戦士ぶりを、憧れと共感を持って、どこかで黙ってじ〜っと見つめていたんでしょうね・・・。

そして、そんな若い人たちが、宴席を設けてＡ氏を招待してくれた・・・。

う〜ん、エエ話やなあ、と思いました。将来にちょこっと希望が見えるような・・・嬉しい話でした。

Ａさん、さぞや若い人たちとのお酒はおいしかったことでしょう。
職場の、ま、形式的な退職祝の酒席なんかとは桁違いの嬉しさですよね〜。（ひょっとしたら、Ａさん、すでに職場の「伝説の人」「神話中の人物」になっていたかもね・・・。）

この後輩達からの「呼び出し状」こそ、Ａさんが大いに自慢できる、最高の「卒業証書」だと思います。
本当によかったですね、Ａさん。　　ご卒業を心からお祝いします。