実家の母は、まもなく満８０歳の誕生日を迎えます。老夫婦２人だけの生活は、大した会話も無く、かと言ってしょっちゅう入退院を繰り返す父の世話で、母は出かける訳にもいかず、かなりストレスがたまっているようでした。

「何かないかしらね？」
「退屈しのぎにはメールが１番！」
「そうお？やってみようかしら？」

そもそも父がＰＣを始めたのは８０歳を過ぎてから。はがきを書いたり、メールも時々していたのですが、いつの間にか自分の身体をいたわるのが精一杯になり、今では、帰省時の私専用になっているのです。それでも、ＰＣは買い換えられ、ＷＩＮＮＤＯＷＳ　ＸＰの最新版なんですよ。

母の女学校時代からの仲良しで、メールをしている方があり、その方と交信をする気になりました。先ずはとりあえず、電源を入れるところからメールを書くところまで、順にやってみることにしました。ローマ字は大体判っているのですが、時々混乱します。ぽつんぽつんと打つうちに短いメールが作成できました。

メールを保存しておいて、お友達にアドレスを聞こうと、母が電話をしましたが、ご主人が出ていらして、奥様はお留守とのこと。
「実は、お願いしたいことがありまして、娘と代わります」

奥様のご帰宅後でもよかったのですが、アドレスがお判りになるかどうか尋ねました。
相手：「えっ、あのう、そのう、・・・・・・（似たような言葉が延々と続く）」
私の心の声：（判るの、判らないの、どっちー？！）
相手：「多分判ると思いますが・・・。今からＰＣを開けてみますので、お電話番号を」
と言うわけで、ＦＡＸでお知らせ頂く様にお願いして、電話を切りました。



電話の内容を母に言って大笑い。元銀行員で、生真面目な方だそうです。言われなくても、その印象！　お年も、父と一緒の８７歳とか。

ＦＡＸが届くまでかなりかかりました。最初の一言が傑作！　「アウト」と書かれていたのです。いろいろやってみたけれど、自分の能力では不可能とのこと。

お世話をかけて申し訳なかったこと、こちらのアドレスをきっちりと丁寧に書いて、お暇な折にメールを頂きたい旨、ＦＡＸを送りました。

またかなり後に、ＦＡＸ。メールと言っておいたのに、とりあえずＦＡＸで知らせて来られたのかしらね、と言いながら見ると・・・

今度の最初の一言は、「孤軍奮闘の末」ですって！　アドレスが書かれていました。ところが、当然あるべき場所にドットが無かったり、不明な箇所があるのです。タイトルを付ける癖から考えると、メールをなさる方の様ですが、あまり慣れていらっしゃらないのでしょう。奮闘ぶりを想像して笑ってしまいました。

ｉやｒの筆記体にも見えるし、あれこれ可能性を考えて、４つほどの宛先に、保存してあった母の書いたメールに、私の文も添えて送りましたが、ことごとく住所不明で戻ってきました。これ以上なす術が無く、奥様からのメールを待つことにしたのです。

待ちに待ったメールが来ました！　アドレスを見ると、？？？　ご主人の書いてこられたアドレスとは、似ても似つかぬもの。サーバーがまったく違うのです。
変更なさったのでしょうね。

早速、母から返信。保存した分は、返事としては不向きだったので、最初から書き直し。ほんの３行ほど書いただけで、へとへとになっていましたが、とにかく手取り足取りして、送れました。

それに対してまた返事。「実は私パソコンは苦手なので先日から帰っている嫁にやって貰ったのですが、主人が“自分でやりたい”等と申したり、ごたごたしまして御免なさい。出来ましたらなるべく携帯のほうにメール下さいな」と。

２人がメールするために、５人が関わったのですね。その後、私がメールをしていたら、母が笑いながら言いました。
「カチカチ言わせて、早いスピードでメールをしているのを見たら、なんだか悔しい！」と。

お友達のご主人も、母も、急にやる気を起こした様子。老いて益々盛ん、じゃないけれど、新しいことに挑戦するのはいいことです。私が居なくても１人で出来るよう、よーく教え込んでおきましょう。