ある秋晴れの日、春から話題にしていた評判のお料理屋さんに行きました。友達と相談の上、初めてだし、お昼でもあり、４段階あるうち１番安い分でいいわ､ということで予約しておいたのです。松茸の季節なので、もう少し高いのでもいいかな、という迷いはあったのですが…。

春以来会っていなかった友達も居て、久しぶりの集まりです。１人は、元々お料理が上手な上、プロになろうと学校に入り直し、猛勉強中。もう１人は、お客さまを招いたりして、凝ったものもよく作る人。そして残りの１名は、食べる専門、口だけいっちょまえの人（誰？）！

小さなお店で、厨房を直角に囲むカウンター席が８席と１部屋。狭い厨房に、板前さんたちが、５人も入っています。写真で見たご主人らしき人の姿はありません。隣りの常連らしき女性２人組が、「もうすぐ見えますよ」と。

器に凝るご主人と聞いていますが、デザインの変わった冷酒用の鉄瓶が幾つか並んでいます。水屋に入っている器を、席から眺めながら待っていました。カウンターの上には、竹篭に入った見事な松茸が、５〜６本置かれています。これがお料理に出るのかしら？　ちょっと期待！

写真通りのご主人が登場し、お料理が始まりました。器の中で紅葉狩り？というようなお料理の美しさ。珍しい食材の取り合わせ。お味は勿論、満足です。

途中まで３組とも同じお料理だったのですが、種々の豆皿料理の時、１組の家族（私たちよりは年上らしき御夫婦＋娘さん）には、豆皿の種類が多いことに気付きました。私たちより高いほうね？と、コソコソ。



いろいろなお料理の後、土瓶蒸しが出ました。落ち着いた茶色に金ですすきが描かれた上品な器。あまり見かけない縦長の形です。「先ずは酢橘を入れないで、飲んでみて」と友達。「ハイ､先生！」と、もう１人。う〜ん、おいしい！松茸の香りが出汁に絡まって…。「美味しんぼ」みたいには書けませんね。蓋を開けると、まあまあの大きさの松茸が２切れ。鱧や銀杏も。

友達が質問すると、「うちでは、丹波篠山のものだけ使ってます」と、ご主人。
本物だー！　ま、これで満足か。

かごの中の松茸が取り出され、丁寧に処理された後、七輪の炭の上で焼かれ始めました！　いい香りが漂ってきます。そして…。

その松茸は、次々と、先程の家族３人にだけ出されて行きました！！！　焼いたもの、生のもの、また焼いたもの…。香りをかがされた分、なんだか却って惨めな気分に。

友達が、お運びの人にこっそり聞きました。云万円のコースなんですって！　４段階しか書いていなかったのに、その最高より更に高い！　常連さんで、特別なんでしょうか？！

という訳で、松茸三昧というのは、他人さまのお話なのでした！食事が済んで表に出ると、思いがけず雨。私達の涙雨？　食べ物の恨みは恐ろしい。なあんて言うのは私の気持ち。友達２人は大金持ちです。済みません､一緒にしちゃって。

でも、いいもん、云万円も出すんなら、松茸買えるもんねー。七輪だって、炭だってあるもん、焼くだけなら私にだって出来るもんねー。