私が１７、あの人が２０歳のときでした。
なーんて、こんな歌謡曲の歌詞があったような気がしますが・・・。

私が高校生から大学生の頃まで、我が家に、家事見習いの女の子が同居していました。背が私よりずっとずっと高く、横にもずっとずっと大きく、大きなお姉さんと言う感じの人でした。色白で、ほっぺがいつも真っ赤、長い髪をポニーテールにしていて、私と仲良しだったのです。高校生の頃、暗くなってから駅に着くと、必ず迎えに来てくれたのですが、後から思えば、彼女の方がよっぽどお年頃。よくあんなことを頼んだものです。

我が家を辞めてから４０年位経つのに、折に触れ、実家に電話をして来たり、訪ねてくれたりしているそうですが、今回たまたま私が電話に出たことで、私に会いたいからと、私の予定に合わせて、実家を訪ねて来てくれたのです。

玄関に入るなり、お久しぶりー！と、ワーワーキャーキャー大騒ぎ。長かった髪はショートにまとめ、白髪もちらほら。でも印象は昔と同じ。

どうしても見せたいものが、と彼女が袋から取り出したものは、緑の石のブローチ。彼女の２０歳のお誕生日に、私が旅先から買ってきてプレゼントした物だとか。「セーターにつけるといいわよ」と言われた言葉まで覚えているんです、と彼女。

私としては全く覚えていないのですが、“１７歳で旅先”と言うのなら、北海道の修学旅行に違いありません。それを今まで大事に大事に持っていてくれたのだそうです。娘さんも、「お母さん、忘れないように持った？」と聞いてくれたのだとか。スーツに付けてこようかと思ったけれど、落としてもいけないし、と。聞きながら、私の方がうるうるしてしまいました。それで家の中で、スーツの襟にブローチを付けてあげたのでした。

せっかく訪ねてくれたのですから、お昼をご馳走しようと、近所のちょっとおしゃれなお店を予約しておきました。その日は偶然彼女のお誕生日と知って、食前酒で乾杯！



また実家に戻って、夕方まで、母と３人で話は尽きませんでした。市場での買い物で覚えた経済観念、習った家庭料理、どれも結婚後とても役立っていますとのこと。自分の置かれた境遇を素直に受け入れる、性格の良い人なのです。帰りには、母の手作りのポーチを娘さんにもと２つ、お小遣いも入れて、母が渡していました。

私の還暦のお誕生日前日、花屋さんから、明日お花を届けますとの電話。彼女からと知って、もしや私に？と期待！ところが当日、宛名は母の名前。ガクッ！

父が入院中なので、母の癒しのためでした。でも、同時に、何日かは知らなかったけれど、私のお誕生月を知っていたので、一緒に眺めて頂ければと思ったとのこと。彼女の訪問が彼女のお誕生日当日、お花が届いたのが私のお誕生日当日、というのも、何かの縁なのでしょう。２人とも良いお誕生日が迎えられました。