261講

「聖霊によって、おとめマリヤの胎から」

使徒信条講解５
2006年7月23日



イエス・キリストの降誕はヨセフとマリヤの肉体的交わりによるものではなく、神の超自然的な力による。「聖霊があなたの上に臨み、いと高き方の力があなたをおおいます。」（ルカ１：３５）　この処女降誕と復活はキリストについての最大の軌跡であり、人間の理性では理解しがたいことであるが、これを信じることが聖書を信じるということである。

奇跡とは神の直接介入によって起こる超自然的現象ということができる。神は必要な時に奇跡を起こされる。しかし、神は「超自然」だけではなく、人間の目に合理的に見える「自然」をも司っておられる。神によって造られたものはすべて神に管理、支配されているのである。奇跡のみが神のわざではない。

もしも聖書に奇跡がなかったら信じやすいだろうか。それは、信じやすいというより、信じる価値がないものになってしまうだろう。もしも、聖書に奇跡がなければ、イエス・キリストは「ただの教師」。聖書に奇跡があるからイエス・キリストは「救い主」なのである。私たちは奇跡ゆえに信じるのである。

イエスの母マリヤは神のことばと奇跡をそのまま受け入れた女性。「ほんとうに私は主のはしためです。どうぞ、あなたのおことばどおりこの身になりますように。」（ルカ１：３８）　マリヤは特別の女性ではなく、ごく普通の卑しい身分の、謙虚に神に従う女性であった。そのような女性に神は聖霊によって、すなわち神の御意志で奇跡によってイエスを身ごもらせたのである。

イエス・キリストは、マリヤという人間の女の胎に宿り、他のすべての人と同じように、その中で小さないのちが成長し、陣痛の苦しみを経て生まれて来られた。人間の肉体を持った完全な人であった。キリスト教の「救い」は、キリストの十字架の「贖い」を手段とするが、その「贖い」はイエスが完全な人間でなければ意味がなかった。全能の神は、私たちの救いという目的のために奇跡を行なわれる方である。私たち自身にも数多くの奇跡のわざを表わしてくださるお方なのである。