316講

「悪には善をもって」

ローマ１２：１７〜２１
2007年8月12日



1945年8月14日、時の中国の総統、蒋介石は終戦のメッセージを全中国の国民に対して出した。注目すべき言葉の数々。「もし今次の戦争が、人類史上最後の戦争となるならば（世界の人類もわが同胞もそのように切望しているものと信じる）たとえ形容不能の残虐と屈辱を受けたとはいえ、決してその賠償や戦果は問うまい。」「われらは始終一貫、ただ侵略をこととする日本軍閥のみと敵とし、日本人民は敵としない旨を声明してきた。（中略）決して報復したり、更に敵国の無事の人民に対して、侮辱を加えてはならない。」　彼の強い主張により、日本は莫大な賠償金を免れ、中国大陸にいた200万人以上の軍や民が速やかに安全に帰国し、分割統治の危機からも逃れることができたのである。

蒋介石は、アメリカで教育を受けたクリスチャン宋美齢と出会い、結婚してクリスチャンになった。イギリスの「タイム誌」は彼のことを「アジアで最も偉大な人物」と題し、「毎日朝5時半に起きて、中国語版の聖書を読み、祈って、自由中国の運命を探っている」と紹介している。

「だれに対してでも、悪に悪を報いることをせず、すべての人が良いと思うことを図りなさい。あながたは、自分に関する限り、すべての人と平和を保ちなさい。愛する人たち。自分で復讐をしてはいけません。神の怒りに任せなさい。それは、こう書いてあるからです。『復讐はわたしのすることである。わたしが報いをする、と主は言われる。』（ローマ１２：１７〜１９）」　人間の憎しみの感情から報復をしてはならない。神も怒っておられるはずだから、正しく判断される神が復讐されるかどうか、その神にお委ねしなさい、と聖書は語る。

中国は15年にわたり日本に痛めつけられた。感情的にも経済的にも大変な中で、指導者蒋介石は「汝の敵を愛せよ」というイエスの教えを、敵に報復をしない具体的な仕方で日本人民を愛したのである。実に感動的である。「悪に負けてはいけません。かえって、善をもって悪に打ち勝ちなさい。」（ローマ１２：２１）　怒りと報復の繰り返しがエスカレートし、その果てが悲惨な戦争。イエス・キリストは決して悪には悪をもって対処されなかった。私たちも主イエスを模範にしたい。